非核の政府を求める会は6月7日、東京都内の会場とオンラインを併用して第39回全国総会を開き、新活動方針と「国民のみなさんへのアピール」を採択、83人の世話人と27人の常任世話人など新役員を選出しました。
 岩瀬晃司、平野恵美子両常任世話人が座長を務め、「みやぎ県民の声」宮城県議会議員の佐々木功悦常任世話人が開会あいさつ。全国労働組合総連合副議長の石川敏明さんが常任世話人会を代表して総会議案を提案しました。井上哲士日本共産党参議院議員が国会報告を行い、小沢隆一東京慈恵会医科大学名誉教授、岩井孝元原子力研究開発機構研究員の両常任世話人が補強報告。討論では10人が発言し、元日本自治体労働組総連合中央執行委員長の駒場忠親常任世話人が閉会あいさつを行いました。全国総会で採択された活動方針は次の通りです。


非核の政府を求める会 第39回全国総会議案

 はじめに

 ことし2025年は、戦後・被爆80年の節目となる。国際社会が戦後、「国連憲章と国際法にもとづく紛争の平和的解決」という原則を手にしたことは、人類史上、画期をなすものである。わが国は、侵略戦争と植民地支配の反省から、不戦を誓う日本国憲法前文と9条を掲げて国際社会に復帰し、これまで世論と運動によって憲法改悪を阻止し、自衛隊は海外で一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出してこなかった。広島・長崎の被爆者と日本の原水爆禁止運動は、原爆投下とビキニ水爆実験被災の痛苦の体験から、核兵器廃絶を世界に訴え、人類史上初の核兵器禁止条約の誕生と新たな核使用を許さない世論の形成に貢献してきた。
 今総会は、こうした世界の本流が大きく発展していることを再確認し、歴史の歯車の逆転を許さない決意を新たにする。日本被団協のノーベル平和賞受賞を機に、「核兵器のない世界」に向けて、日本政府が一刻も早く核兵器禁止条約(TPNW)に参加するよう強く求めるものである。
 今総会は、東京都議選と参議院選挙を目前にして、国会会期末に向けて大きな激動の可能性をはらむ緊迫した情勢のもとで開かれている。昨年10月の総選挙で少数与党に追い込まれた石破自公政権は、依然として世界の本流に逆らい大軍拡を加速させ、TPNW に背を向け続けている。2つの選挙で、この政権と補完勢力に厳しい審判を下し、自民党政治に終止符を打ち、世界で核兵器廃絶をリードする政治に転換しようではないか。

[Ⅰ]激動する世界の動きにどう向き合うか
■「核兵器のない世界」の実現へ、TPNW規範力の強化を

 第1回国連総会・第1号決議が「原子兵器、および大量破壊に応用できるその他すべての主要兵器を、各国の軍備から廃絶すること」を求めてから80年目となる。被爆者による「核兵器の非人道性」の告発、内外の非核平和めざす運動と各国政府との共同のなかで採択され、2021年に発効したTPNWは批准73ヵ国、署名94ヵ国へと広がっている(25年6月現在)。
 いまTPNWは「核兵器のない世界」実現にむけた〝希望の光〟になっている。第1回締約国会議で採択した「行動計画」は、「普遍化」(参加国・支持国の拡大)を最も重要な「戦略」としている。条約の実効力と規範力の強化のために、条約参加国を広げることがカギとなっている。
 3月に開かれた第3回締約国会議は、政治宣言「世界の不安定が高まる中で核兵器のない世界への誓約を強化する」を全会一致で採択し、「核兵器の完全かつ検証可能で不可逆的な廃絶は、単なる願望ではなく、世界の安全保障と人類の生存にとって必須である」として、核兵器廃絶への「揺るぎない決意」を表明した。

 同会議では、「核抑止」論を克服する新たな「挑戦」が行われた。核保有国や日本など核依存国は、安全保障の観点から「核抑止」が必要だとして、これらの国々がTPNW に参加しない最大の障壁となっているからである。この「核抑止」とは、いざという時にはヒロシマ・ナガサキのような非人道的惨禍を引き起こすことをためらわない議論にほかならない。会議に提出されたオーストリアが取りまとめた報告書は、「核抑止」は人道的に認められないというだけでなく、安全保障上も誤っていると批判し、これにもとづき活発な意見が交わされた。
 政治宣言は、「核兵器に内在する危険性と、その国境を超える世界的な結末は、すべての国の安全保障が核兵器によって脅かされていることは明らかであり、それゆえすべての国家は、核兵器の完全廃絶という喫緊の安全保障上の利益を有している」と明確に述べている。
 核使用が前提の「核抑止」政策は、違法な大量破壊兵器による最悪の威嚇にほかならない。それは、侵略や戦争を抑止しないどころか、全人類の安全を危険にさらす。それは核軍拡競争の悪循環をつくりだし、仮に抑止が破綻した場合、全世界にとって取り返しのつかない大災厄をもたらす。かかる議論は、「核兵器なき世界」への展望を未来永劫にわたり示しえないばかりか、新たな核拡散に道を開くことになりかねない。「核抑止」論を打破するうえでも、「核兵器の非人道性」を告発する圧倒的な国際世論をつくりあげることが強く求められている。来年11月にはTPNW第1回再検討会議が開かれる。被爆国日本の市民社会の役割はますます重要になっている。
 米科学誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』(原子科学者会報)の「終末時計」の針は、1947年の創設以来最短の「89秒」となった。ロシアによるウクライナ戦争が「軽率な決定や事故、誤算によっていつでも核戦争に発展する可能性がある」と警告し、今回秒針を進めたのは「全世界の指導者への警告」だと指摘している。

 核威嚇を繰り返すロシアのプーチン大統領は、核ドクトリンを改定して核使用のハードルを引き下げ、トランプ米政権やNATOは「核抑止力」の強化をはかり、マクロン仏大統領は欧州に「核の傘」を提供する意思を表明した。いずれも、核兵器廃絶の流れに反するものである。「核対核」の緊張と「軍事対軍事」の対立と矛盾を、これ以上激化させてはならない。
 昨年9月の国連「未来サミット」で採択された「未来のための協定」には、国連での首脳級による「核兵器のない世界に向けて前進する」との国際合意が明記されている。第79回国連総会では、TPNW参加促進の決議が127ヵ国の賛成で採択され、新しく提起された「核戦争の影響と科学的研究」を求める決議も136ヵ国の賛成で採択された。
 5月9日に閉会したNPT第11回再検討会議第3回準備委員会では、核保有国の孤立が深まった。TPNW締約国など大多数の国が「核抑止」論を批判し、核保有5大国にNPT第6条の核軍備撤廃義務の具体化や実践を求めた。「議長による勧告」は、「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」として、第6条を実践する義務に言及するとともに、TPNW発効に「留意する」との文言が明記された。来年4月下旬から開かれるNPT再検討会議に向けて、各国政府に対してNPTと合意事項の履行を求める市民社会の運動の強化が求められている。

■国連憲章にもとづく国際平和秩序の構築を
<国連憲章、国連決議にもとづく戦争終結、停戦を>

 ロシアによるウクライナ侵略は3年を過ぎて今なお続き、ウクライナ民間人の死者は1万2600人、負傷者は2万9000人を超えている(25年2月現在)。ウクライナでの流血を終わらせるために、国際社会には、和平協議に道を開くあらゆる努力が求められている。和平は、国連憲章、国際法、ロシアによる侵略を非難し即時撤退を求める4度にわたる国連総会決議にもとづく「公正な和平」でなければならない。そのために、「侵略と戦争を許さない」「国連憲章と国際法を守れ」という国際世論の圧倒的な結集、世界と連帯した運動こそが求められる。
 イスラエルによるパレスチナ自治区ガザに対するジェノサイドは1年8ヵ月余に及ぶ。ガザ保健省は死者数5万4056人(5月27日)と発表したが、イスラエルの新たな地上作戦により凄惨を極め犠牲者はさらに増大している。ジェノサイドのエスカレートを糾弾し、即時中止を求める。国際社会が、国連決議にもとづくイスラエル制裁を厳格に実施することは急務である。トランプ米大統領は、「ガザから住民を強制退去させ、アメリカが所有する」と発言し、ジェノサイドを事実上応援している。日本政府はアメリカによるイスラエル支援をやめさせるべきである。

<平和と人権尊重の国際秩序を>

 国連が発足して80年。世界の諸国民は、「言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救う」(国連憲章)ために、軍事同盟に頼るのでなく、世界の平和と安全を維持する国際機構・国連を創設して、武力による威嚇または武力の行使を禁止した。その後、植民地支配から独立したアジアや中東、アフリカの国々、非同盟運動、そして諸国民の運動などによって国連憲章にもとづく平和と人権尊重の国際秩序が発展するなかで21世紀を迎えている。この本流は揺るがない。各国の主権尊重、領土の一体性、国際紛争の平和解決などの原則を確立させた国連憲章にもとづく多国間主義を守り発展させることが、いまこそ重要になっている。
 トランプ米大統領は、「アメリカ第一」主義を掲げ、気候変動に関する国際的枠組みの「パリ協定」再離脱、WHO(国際保健機関)脱退表明、アメリカ政府の海外援助を管轄するUSAID(国際開発庁)の閉鎖、世界各国との貿易協定を一方的に破り捨てるトランプ関税などを相次いで強行し、国際社会に深刻な混乱をもたらしている。しかし、世界は、国連憲章・国際法にもとづく秩序、包摂的な平和構築、核兵器をはじめ非人道兵器の禁止・廃絶、気候危機打開、持続可能な社会の実現など、全人類的課題の重要性を広く共有し、多国間の協同・協力を蓄積してきており、もはや一国一大統領の横暴勝手で決まる世界ではない。

 紛争を平和的に話し合いで解決するためには、排除や軍事的対応の強化ではなく、地域のすべての国を包み込む包摂的な平和の枠組みの構築が重要である。東南アジア諸国連合(ASEAN)は、1976年に武力の不行使と紛争の平和的解決を誓約した東南アジア友好協力条約(TAC)を締結し、この条約を土台に、粘り強い対話の努力を続け、半世紀前には「分断と敵対」が支配していた地域を「平和と協力」の地域へと劇的に変化させてきた。2019年には、ASEAN主導の東アジアサミットの枠組みを活用し、インド太平洋地域を「対抗ではなく対話と協力の地域」にしていく平和構想「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)を打ち出した。東アジアサミットに参加するASEAN諸国と日本をはじめアメリカ、中国、ロシアなどもAOIP促進に支持を表明している。「核兵器のない世界」を実現するうえでも、東アジアでも、国連憲章にもとづく平和秩序を強固にし、ASEANと連携して取り組みを発展させ、この地域の軍事同盟体制の克服を展望し、戦争の心配のない地域にしていくことがますます切実な課題となっている。

[Ⅱ] 「核抑止」から脱却、「TPNWに参加する日本政府」実現を

■唯一の戦争被爆国にふさわしい役割の発揮を

 広島、長崎に人類史上初めて原子爆弾が投下されて80年となる。アメリカの報道統制によって被害などの情報が長年隠蔽されてきたが、マーシャル諸島ビキニ環礁でアメリカが行った水爆実験によって第五福竜丸が被ばくしたことを機に原水爆禁止署名運動が全国に広がった。原水爆禁止世界大会の開催、原水爆禁止日本協議会(日本原水協)、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の結成へと運動は発展してきた。
 ことし結成70年を迎える日本原水協は、毎年開催される原水爆禁止世界大会、国民平和大行進や平和の波行動など国内外での原水爆禁止運動の要として役割を発揮している。日本被団協は、「被爆者」が受けた言語に絶する被害と様々な差別や偏見を乗り越えるべく、原爆被害への国家補償と核兵器廃絶を掲げて、被爆の実相とその後遺、被爆者の実情についての証言を国内外で訴え、「核兵器の非人道性」を国際社会の合意へと押し上げ、核使用を許さない重要な役割を発揮し、昨年12月にノーベル平和賞を受賞した。唯一の戦争被爆国の日本政府がTPNWに背を向け続けているなかで、これらの運動の継承と発展が痛切に求められている。

 日本政府は、この間、2024年の日米拡大抑止閣僚級会合に続き、同年12月には日米両政府で「拡大抑止に関するガイドライン」を作成してきた。石破自公政権は、「我が国を取り巻く安全保障環境の悪化」などと、アメリカの「核の傘」への依存を強め、大軍拡と「核抑止力」の強化をはかっている。ことし2月の日米首脳会談で、「日米同盟の抑止力・対処力をさらに強化していく」と合意し、アメリカの核兵器を含む「拡大抑止」の強化を宣言した。TPNW 第3回締約国会議へのオブザーバー参加さえも拒否し、非核「神戸方式」の神戸港に50年間で初めて米掃海艇を非核証明書の提出なしに入港させた。4月にはアメリカ空軍の戦闘機B1-Bが米軍三沢基地に展開し、核搭載可能なB52戦略爆撃機が自衛隊との共同訓練を繰り返すなど、日米「核密約」のもとでの核軍事同盟を強化している。
 これに対して、核兵器廃絶を求める国民世論と運動は、日本被団協のノーベル平和賞受賞を機に世代を超えて盛り上がっている。締約国会議への参加を求める声は野党のみならず与党からも相次ぎ、日本政府に核兵器禁止条約への参加を求める意見書採択は717地方議会(4月7日現在)と全議会(1788)の40%にのぼり、署名は295万筆(日本原水協175.6万筆、日本被団協119.7万筆)を超えている。被爆80年を迎え、被爆国日本の政府が果たすべき役割はこうした国民の声に真正面から応えることである。

 2025年8月末を目標とする「ビキニ被災70年から被爆80年へ―非核の日本をめざす全国キャンペーン」(「非核日本キャンペーン」)の取り組みが進められている。わが会は、同キャンペーンを支持し、広範な国民的共同の発展に尽力する。
 日本政府に対し、以下の諸点を中心に、唯一の戦争被爆国にふさわしい「非核の政治」を行うよう強く求める。

○TPNWに速やかに署名・批准し、核保有国を含む国連全加盟国に同条約加盟を促す。
○核保有国に、NPT第6条と再検討会議の「核兵器廃絶合意」の誠実な履行を求める。
○原爆被害の実態を世界に発信し、いかなる状況下でも核兵器使用は許さないと表明する。
○被爆者施策の抜本的改善、原爆被害への国家補償に踏み切る。
○核兵器による脅迫=米「核抑止力」政策(「核の傘」)から脱却する。
○「非核3原則」を厳守し、非核の日本を実現する実効性ある措置を講じる。
○日米「核密約」を公表し、これを破棄する。
○朝鮮半島非核化と北東アジア地域の平和体制の構築を進める。

■アメリカいいなりで戦争する国づくりの暴走は許さない

 自公政権は、アメリカいいなりで5年間で43兆円もの軍事費を注ぎ込む大軍拡に突き進み、戦争への危険性が増している。「敵基地攻撃」能力の保有として、他国の領土に撃ち込む長射程ミサイルの実戦配備が始まり、高性能ミサイルの開発・生産、大型弾薬庫建設を進めている。ことし3月、自衛隊の「統合作戦司令部」が発足したが、これは「敵基地攻撃」体制にとって欠かせない米軍と自衛隊の「シームレスな統合」のためであり、自衛隊を事実上、米軍の指揮統制下に丸ごと組み込む体制づくりにほかならない。この空前の「戦争する国づくり」への暴走は、「専守防衛」を葬り去るだけでなく、日本の主権すら投げ出すものである。
15年制定の「安保法制」、22年に閣議決定の「安保3文書」にもとづく大軍拡の道を突き進み、25年2月の日米首脳「共同声明」で27年以降の「防衛力の抜本的強化」まで約束した。コルビー米国防次官は、日本に対して早急に軍事費をGDP比3%以上に引き上げるよう要求してきた。今年度の軍事費8.7兆円をはるかに上回る年間16~17兆円もの大軍拡となるが、石破首相は3%に引き上げないと明言しない。日本と韓国に前方展開の軍事基地を置くアメリカのアジア戦略につき従う大軍拡は、東アジアにおける軍事緊張を増大させこそすれ、平和の実現に資するものではない。軍事費の急速な増大は、医療、福祉、教育、食糧などへの財政を圧迫し、国民をいっそう苦しめる。いまこそアメリカいいなりでなく、憲法9条を生かした平和外交で、戦争のない東アジアをつくろう。

■沖縄を再び戦場にさせない、日米地位協定の抜本改定を

 沖縄戦終結から80年。元旦の「沖縄タイムス」は特集を組み、「沖縄では米軍による事件事故や爆音に接するたびに、沖縄戦の記憶がよみがえる。…基地によって日常生活が脅かされるようなことがない当たり前の暮らしは、いつになったら実現するのだろうか」と訴えた。「命(ぬち)どぅ宝」の沖縄県民の願いを、今こそ叶えなければならない。
 石破政権は、「安保3文書」にもとづき、沖縄、南西諸島でのミサイル基地化を推進し、辺野古新基地建設工事をしゃにむに進めるなど、沖縄県民の願いに背を向けている。沖縄県内の自衛隊基地は、1972年祖国復帰時の3施設166㌶から、2023年には57施設811㌶へと拡大している。沖縄に現存する嘉手納などの核兵器貯蔵庫は、重大な緊急事態が生じた時はいつでも活用できるよう、核基地機能が温存されている。沖縄・南西諸島での軍備増強は、新たな軍事的緊張・軍拡競争を招来することとなり、ひとたび戦火を交える事態を招けば、同地域が真っ先に攻撃目標となることは避けられない。
 戦時における本土への住民避難は「机上の空論」である。今年2月に締結された自衛隊と葬祭業組合との「連携・協力協定」では、自衛隊員の国外での戦死までが想定されている。沖縄・南西諸島を再び戦場にしてはならない。玉城デニー県知事を先頭にした「オール沖縄」の力と全国の声を一つにし、「辺野古新基地建設を中止せよ!」「普天間基地無条件撤去!」「南西諸島のミサイル基地化は止めよ!」の声と運動を巻き起こそう。

 くり返される米兵による犯罪、とりわけ性犯罪は断じて許されない。一刻も早い日米地位協定の抜本改定と米軍基地の撤去が必要である。そのためにも、「非核の政治」をめざす運動を通じて、「安保・軍事同盟絶対の政治からの脱却」の展望について、大いに議論しようではないか。この展望こそが、沖縄の人々の想いを実現する途である。

 ■学術会議解体法案、憲法改悪阻止のたたかい

 日本学術会議解体法案がまともな審議もなく採択されようとしている。そもそも日本学術会議は、明治憲法の下で学問の自由が脅かされ、先の戦争で科学技術の研究が軍事利用に動員された負の歴史をふまえ、政府から独立して活動する機関である。それは大学や研究機関を横断した日本の科学者、研究者を代表する、内閣府の「所轄」下に置かれた「国の機関」で、科学の向上をはかり、行政、産業および国民生活に科学を反映浸透させることを目的としている。
 政府が画策する現在の学術会議の廃止と法人化は、学問の自由、学術の独自の社会的存在意義を否定する暴挙であり、政府の政策や軍事への学術の動員が狙いである。学術会議の総会(4月15日)は、法人化の企みを「ナショナルアカデミー」成立の「5要件」を示しつつきっぱり退ける決議と声明を発出した。学術的知見の国民による正しい位置づけは平和と民主主義の実現にとって不可欠である。学術会議の解体を断固として阻止し、学問の社会的意義・人類的価値を確認しよう。法案が狙う軍事研究をはじめ政府や財界の意に沿う方向への学術界の動員を許せば、それは「非核の政治」「原発ゼロ」実現の新たな障害となりかねない。わが会は、政府が学術会議の総会決議と声明を重く受け止めるよう求めるとともに、日本の学術を圧殺する法案に反対する多くの学者、学協会や市民とともに廃案に追い込むために力を尽くす。
 石破政権は、安倍・菅・岸田政権と引き継がれてきた改憲策動を継承し、安保法制と「安保3文書」、大軍拡によって誰の眼にも明らかとなった「憲法と安保の矛盾」を9条改憲の方向で解消することをめざし、改憲推進の一部野党を巻き込んだ明文改憲を虎視眈々と狙っている。とりわけ改憲派が一致できる「緊急事態時の国会議員の任期延長」改憲での条文案の具体化まで取りざたされている。5月3日の改憲派団体の集会は、自民、公明、維新、国民民主4党そろい踏みで明文改憲の気勢を上げる場となった。
 「非核の政府」の実現にとって重大な障害となる「9条改憲」と緊急事態条項の導入、大軍拡や経済安保、サイバー防御法など実質的な憲法の破壊(壊憲)に反対し、憲法の民主的、平和的条項を断固として守り抜くため、市民と野党の共闘の新しい発展のために力を尽くそう。

■「原発回帰」のエネルギー基本計画、気候危機打開の責務果たせ

 石破政権は、ことし2月18日、中長期のエネルギー政策の基本方向を示す「第7次エネルギー基本計画」を閣議決定した。このなかで原子力を「脱炭素効果の高い電源」と位置づけ、「最大限活用する」とした。東電・福島第一原発事故後には明記されていた「可能な限り原発依存度を低減する」を削除し、『うたい文句は脱炭素、本音は原発回帰』というのが本質である。
 政府は、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウムを再利用する核燃料サイクルに依然固執しているが、イギリスやアメリカは民生用プルトニウムを地中処分することを国の政策として決めている。「百害あって一利なし」の核燃料サイクルから即刻撤退すべきである。
  福島第一原発事故から14年余を経過しても、なお、故郷に戻れない方々が数万人もいる。大量の汚染土が積み上がり、事故機の廃炉の見通しはまったくない。原発事故は収束しておらず、これからも人々を苦しめる。国と東京電力は事故への真摯な反省に立つべきである。
  そうした状況を無視する「原発回帰」は絶対に許されない。ドイツに続き、台湾が5月に「原発ゼロ」を実現したように、世界の流れは再生可能エネルギーである。二度と原発事故の被害を生まないため、気候変動危機の打開の責務を果たすためにも、「原発回帰」のエネルギー基本計画は撤回し、省エネルギーと再生可能エネルギー拡大、主力電源化が求められる。

■平和とジェンダー平等は不可分

 TPNWは核軍縮に関する条約では初めて、女性と男性の平等な参加が持続可能な平和の達成に不可欠であると明記するなどジェンダーの視点を取り入れた。これは、戦争を防ぐためには貧困や格差の是正、差別の解消が不可欠と男女同権をうたった国連憲章のもと、平和とジェンダー平等を一体にとりくんできた女性・市民の運動が国連を動かし、人権分野での大きな発展を築いてきた到達である。戦争、とりわけ核戦争は最大の人権侵害であり、女性や子ども、社会的な弱者への差別を増幅させ、未来を奪う。人権分野での発展が安全保障の分野にも及び、人道の見地から核兵器をなくすTPNW実現につながった。
 唯一の戦争被爆国・日本の女性たちのなかで、平和憲法を掲げ核兵器廃絶を共通の目的にした「平和なくして平等なし」の運動がとりくまれ、国民の共感がひろがっている。被害当事者の告発が、差別や性暴力は許されないという認識を広げ、ジェンダー平等を求める声は高まっている。
 石破政権は、日本会議や統一協会との癒着を断とうとせず、国民の多くが支持する選択的夫婦別姓や同性婚の実現に背を向け、育児や介護の責任を家庭に押しつけるなど、ジェンダー平等を阻んでいる。日米軍事同盟最優先で、沖縄をはじめ各地の駐留米兵による性暴力にも毅然と対応するどころか、事件の隠ぺいに手を貸す始末で地元の猛反発を招いている。憲法違反の大軍拡で戦争国家につき進み、TPNWに参加する意思もない自民党政治のもとでは、ジェンダー平等も平和も実現できない。生きづらさを変えたいと願うすべての人に、TPNWに参加し、ジェンダー平等を進める政治をともにつくることを呼びかける。

■「非核の政府」実現へ、政治転換いまこそ

 目前の東京都議選、参議院選挙は、大激戦のなか、昨年の総選挙で自公が少数与党に転落したもとで始まった「新しい政治プロセス」を前にすすめる重要な選挙となる。
 石破自公政権は、一部野党を取り込む延命戦略を策してきたが、早くも破綻があらわになりつつある。とくに消費税減税と責任ある財源論、コメ問題とともに「アメリカいいなりでいいのか」が国民的な大争点となっている。トランプ米政権に「日米同盟絶対」でつき従い、大軍拡、辺野古新基地建設強行、「核の傘」強化でいいのかが鋭く問われることになる。
 いま核兵器禁止条約に「加盟するほうがよい」が73%、「日本は米国の核兵器の力に頼ることが必要とは思わない」が55%、「日本政府は世界から核兵器をなくそうと真剣に取り組んでいるとは思わない」が77%という世論調査の結果が出ている。対米外交については、「なるべく自立したほうがよい」が68%と7割近くを占めている(「朝日」2025・4・27付)。この国民の願いに応える政治への転換こそ、強く求められている。
 このなかで野党の立ち位置も問われる。日本共産党は、日本政府に対して「核抑止」論から抜け出し、TPNWに参加すること、「東アジア平和提言」を発表し、日米軍事同盟をやめ対等・平等の日米友好条約を結ぶことを求めている。
 しかし多くの野党に共通するのは、「日米同盟絶対」でアメリカの「核抑止」抜きの外交・安全保障政策は考えられないという思考停止である。これでは、日本政府が「TPNWと核抑止は相いれない」からと締約国会議へのオブザーバー参加すら拒否したもとで、多くの国民の願いに応えることはできないのではないか。
 今回の2つの選挙で、非核平和、暮らし・福祉の願いを託せる政党の前進で、「TPNWに参加する日本政府」の実現への展望を、ともに切り拓くことを心からよびかける。

[Ⅲ] 「非核の政府を求める会」の役割発揮へ

■「非核の政府を求める会」運動の今日的意義

 今日、TPNWの実効力と規範力を高めるうえで、また、アメリカの「核抑止力」への依存を強める石破政権の〝好核政治〟を〝非核の政治〟に転換するうえで、核戦争の不安と日本の核戦場化の危険を除去したいと願う人々によって結成された当会の存在意義の発揮が強く求められている。わが会は1986年5月の結成以来、「核抑止力」論を批判し、次の「非核5項目」にもとづく政府の実現を求めて情報発信、世論喚起に努めてきた。
 ①全人類共通の緊急課題として核戦争防止、核兵器廃絶の実現を求める
 ②国是とされる非核3原則を厳守する
 ③日本の核戦場化へのすべての措置を阻止する
 ④国家補償による被爆者援護法を制定する
 ⑤原水爆禁止世界大会のこれまでの合意にもとづいて国際連帯を強化する
 「非核5項目」の内容の多くはTPNWの前文および各条文に反映され、それゆえTPNWに参加し、同条約を履行する日本政府が誕生すれば、わが会がめざす「非核の政府」実現への大きな接近となる。
 今日、核兵器禁止・廃絶を求める国民世論と共同は着実に発展している。日本政府にTPNW参加を求める自治体の意見書・決議は717自治体(4月7日現在)となり、「非核宣言自治体」も、全自治体の93.5%、1671自治体に上っている(25年5月20日現在、日本非核宣言自治体協議会調べ)。このことは、自治体の権能(行政・議会)と市民の良心が結びついた草の根の底力を象徴的に示している。
 気候危機打開の運動が世界中に広がり、日本の若者たちも声を上げている。「核兵器のない世界」をめざす運動が「人類の未来」を守る多様な運動と連帯・共同する可能性を広げている。被爆80年を迎え、「TPNW参加の政府」実現を求める国民的共同を発展させるために会の役割を発揮するときである。
 わが会は、当面次の諸活動の前進をめざして奮闘する。

■当面の諸課題

①「TPNWに参加する日本政府」の早期実現めざす国民的共同をすすめる
 TPNWに背を向けるとともに、アメリカの核政策に追随して大軍拡を進め、くらしや気候危機問題にもまともに向き合わない自民党政治を終わらせる国民的な運動とも呼応して、日本政府にTPNWへの参加を求める国民的な合意形成、世論喚起が重要になっている。
 わが会は、核兵器の非人道性、被爆の実相を発信・普及の取り組みと結んで、「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名」の推進に力を尽くす。
 わが会は、引き続き、核兵器政策をめぐる日本政府の危険な言動に対して機敏に対処するとともに、非核・平和にかかわる重要問題で政府に要請する。
 「新春メッセージ」、インタビュー等を通じ、各界識者との共同の拡大を追求する。

会主催のシンポジウム、「核問題調査専門委員会」の充実をはかる
 この間、2025年新春シンポジウム「被爆80年――核兵器違法下の時代、問われる被爆国の責務」(1月13日)を開催してきた。引き続き、非核・平和の重要テーマを中心に、シンポジウムや講演会等に取り組む。
 継続的な核問題調査専門委員会活動の調査・研究活動は、わが会の特色をなすものである。この間、TPNW締約国会議やNPT再検討会議の成果をめぐり、講師を招き、各地の非核の会ともオンラインで結び開催してきた。今後さらに専門委員会活動の質的・量的発展をはかる。

〈専門委員会の当面のテーマ〉
▽「安保3文書」、▽「敵基地攻撃能力」論、▽「核共有」論、▽日米「核密約」、▽「核抑止力」論、▽日本国憲法と「非核の政府」、▽世界の核兵器状況・核兵器政策、▽トランプ米政権の戦略・核兵器使用政策、▽核兵器条約、▽日本政府の原発・エネルギー政策批判、▽原発事故処理問題、▽放射性廃棄物の処分問題、▽朝鮮半島の非核・平和プロセス。

原水爆禁止2025年世界大会の成功と「非核日本キャンペーン」の前進をめざす
 被爆80年の原水爆禁止2025年世界大会が8月3日~9日、被爆地の広島・長崎の現地参加を中心に、オンライン参加と併用で開かれる。今年の世界大会は、侵略戦争と核の威嚇、軍事ブロック拡大を許さず、紛争の平和的解決と平和・核兵器廃絶の流れが各国でも国際政治の舞台でも大きく広がるなかで、また26年のNPT第11回再検討会議とTPNW再検討会議に向けて被爆国の市民社会のメッセージを発信し、内外の世論と共同を広げる大会となる。
 わが会は、今年8月末を目標とする「ビキニ被災70年から被爆80年へ―非核の日本をめざす全国キャンペーン」(「非核日本キャンペーン」)、署名推進とともに、日本政府にTPNW参加を求める世論形成の節目ともなる世界大会が大きく成功するよう取り組みを強める。

日本被団協と連携して被爆者支援・連帯活動の発展させる
 TPNW第3回締約国会議では、第6条、7条の被爆者と核実験被害者への支援、環境修復の活動の具体化が強調された。日本政府の対応が鋭く問われている。TPNWが発効したもとで、“被爆者の国家補償を”“現行の認定制度の抜本的改正を”という被爆者の要求の速やかな実現のために、被爆者運動への支援・連帯を強めることがますます重要となっている。
 「黒い雨」訴訟に対し、日本政府は、原告全員を被災者と認定した広島高裁判決を蹂躙して認定要件に疾病条件を加えて被爆者を分断し、高齢の被爆者に耐えがたい負荷を強いている。わが会は、政府の改心なき冷酷な被爆行政に強く抗議する。引き続き広島・長崎のすべての「黒い雨」被爆者と「被爆体験者」の救済を求める運動に連帯し、支援を強める。

非核宣言自治体協議会、平和首長会議など非核自治体運動との連帯・共同を強化する
 非核自治体宣言運動、非核・平和自治体行政の発展を引き続き追求するとともに、「核兵器禁止条約を支持し、日本政府に署名を求める」意見書採択など、自治体から合意と共同を広げる。地方自治法改悪など自治をないがしろにする動きを許さないための連帯・連携を強める。
 平和首長会議、日本非核宣言自治体協議会との連帯・共同を発展させる。

非核の政府を求める会の組織的強化のために
 ・賛同団体や地方の会との意見交換、懇談を進める。
 ・再建・再開をめざす地方の会への協力・援助をはかる。
 ・ホームページを活用した情報発信に努力する。
 ・「非核の政府を求める会ニュース」の情報発信力向上に向けて、紙面改善をはかるとともに、普及に努める。