福島第1原発事故機の廃炉を考える
岩井 孝 元原子力研究開発研究機構研究員・会常任世話人
事故機の現状
福島第1原発の1号機と3号機は水素爆発。2号機は水素爆発なし。4号機は定期点検中でしたが、3号機と4号機はツインで造っていて水素が漏れ込んできての水素爆発です。5号機と6号機は定期点検中だったので事故には至らなかったわけです。
福島第1原発の事故機の廃炉については、廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議で「福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」が決められています。基本は、事故から30年から40年後までに「廃炉」を完了するという言い方です。ただし、この「廃炉」がどういう形かは書いていません。一般的には、原子炉の建屋が全部なくなって更地になるのを廃炉と言うのですが、この事故機に関しては最後の形が想定できないから書いていません。
1号機の使用済燃料プールには392体の集合体が入ったままですが、天井が飛んでクレーンもないですし、瓦礫がいっぱい落ちているので取り出しようがないのです。1号機は、メルトダウン(炉心溶融)によって核燃料等が圧力余裕気に落ちて、格納容器を構成しているコンクリートも溶かしていると言われています。この格納容器の中は12シーベルトと、短時間で致死に至る線量であり、格納容器の中に人が入るのは規制上無理です。建屋の格納容器の近くも5150ミリシーベルトであり、近づいて何かをすることはほぼ不可能です。
1号機の使用済燃料プールからの燃料の取り出しは2023年度ごろまでにと書いてありますが、線量が高くてまだ難しく、天井の大型カバーの設置が25年の夏頃ということになっています。既に2年くらい遅れていて、燃料の取り出しは27年度から28年度を予定しています。
2号機もプールの中に615体の集合体が入ったままです。2号機の場合は建屋の天井が飛ばなかったので建屋内での主にセシウムの汚染が強いのです。建屋の格納容器の上の蓋の上で1時間あたり630ミリシーベルトあり、建屋の方でさえ作業員が入っての作業は命じられません。圧力容器の直下も7~8シーベルト、周りでは15~42シーベルトですので、完全に人間が近づくことができない状態です。
2号機のオペレーションフロアの除染は昨年の10月に完了しており、使用済燃料プールからの燃料の取り出しは2024年から26年度と、あと3年くらいの間に取り出す計画になっています。
3号機の使用済燃料は500数十体あったと思うのですが、簡易のクレーンをつけて取り出しました。3号機の場合は、圧力容器からほぼ全量の核燃料がデブリとなって格納容器に落ちていると言われていますが、格納容器のいろいろなところが損傷していて、上から注いだ水が漏れている状態です。それから1号機とかと同じように格納容器に丸い扉があるのですが、その近くは1時間で5シーベルト近くあるということで近づくこともままならない状態です。3号機は水素爆発しているので瓦礫が落ちていて、リモコンの重機でがれきを片付けている状態です。燃料プールからの燃料取り出しの完了は2031年と書いてあり、あと7年かかるのです。
4号機のプールは、天井が飛んでしまったのですが放射能はなかったので、外側からクレーンで吊り出して取り出しています。
5号機のプールには1542体、6号機のプールには1842体あります。取り出しが後回しになっているのは、1号機とか2号機の使用済み燃料の取り出しのために、使用済み燃料プールとは別の共用プールや乾式貯蔵の容量を空けておくためです。
これら全部を取り出せるのは2031年を予定していますが、私は、使用済燃料の取り出しはおそらくできると思っています。
燃料デブリの取り出し
燃料デブリの取り出しについて、先行していると言っているのが2号機です。中長期ロードマップには、2号機の格納容器内のデブリを2021年に開始すると書いています。この開始というのは耳かき一杯でもいいから取るということですが、まだロボットアームがデブリまで届かないので、未だにひとすくいも取れていません。計画からは既に2年以上遅れています。ロボットアームを通そうとした穴のフランジを開けてみたところ、ケーブルとか中のデブリとかと一緒に溶けたものが詰まっているので、これに高圧水をかけて研磨剤を入れて外枠から削り込んでいるのが今の状況です。
1号機と3号機の格納容器内のデブリは、3号機を先行させると中長期ロードマップに書いてあるだけです。
2号機とかのデブリを取り出す方法として事務局会議の中で検討されている第1候補は「気中工法」です。格納容器の下部が破損しているので水が漏れ、建屋の下部にも損傷があって冠水させると汚染水が漏れだすので、やむを得ず「気中工法」が今の第1候補になっているのです。
もう一つ、「船殻工法」というのが出てきています。原子炉建屋全体を地下から上部まで構造物で完全に覆うもので、建屋が損傷していて穴が開いていても、その構造体の内側が全部水で埋まります。ただこの船殻構造体は実績のない工事なので時間がかかることになるという言い方をしています。
2号機と3号機の場合、格納容器の一番上のところの重さが何十トンもある遮蔽用の蓋の内側にものすごい量のセシウムが付着しています。下手にそこの現場で壊すとセシウムが飛び散ることになり、クレーンで空中に持ち上げると、どこでどう受けるんだとなります。上部からのアクセスのときに問題になると思います。中長期ロードマップには、1号機から3号機の圧力容器内の燃料デブリの取り出しに言及はありません。
政府が計画する廃炉は実現できない
私は政府の考えている廃炉、デブリをほとんど回収して圧力容器や格納容器を解体撤去するような廃炉はできないと思っています。
燃料デブリの推定量は、1号機が279トン、2号機237トン、3号機364トンで合計880トンというものです。
もう一つの問題は、取り出した放射性廃棄物はどうするのかという話です。デブリもそうですし炉心の構造物、圧力容器、格納容器、原子炉建屋、それから周辺の土壌汚染がすごい量であり、大量の放射性廃棄物が発生することになります。原子力学会の報告では合計で783万7000トンという評価です。
今、浜岡の1号機と2号機は廃炉作業中で、低レベル放射性廃棄物は約2万トンで、1機あたり1万トンです。この1万トンとか2万トンの量でも今のところ持っていく処分場がありません。780万トンというのは浜岡1機分の780倍です。
私が考えるのは、広域遮水壁を造って、地下水が入ってこない、出て行かないようにする。もう一つは地下ダムを造る。これは、船殻構造体と同じようなイメージです。この状態で保管監視するというのが私の提案です。これだと、これ以上何か進展することがない、汚染も広がっていかないので、その間に、このまま監視状態を続けるのか、解体するのか、議論する時間を十分に取るべきではないかというのが私の提案です。もっと言うと、事故機だからというだけではなくて、普通の原発も解体はやめて、覆ったらいいのではないかと考えています。
