非核の政府を求める会は6月8日、オンラインを併用して東京都内で第38回全国総会を開催しました。
 常任世話人で宮城県議会議員の佐々木功悦さんが開会挨拶。平野恵美子・新日本婦人の会副会長が常任世話人会を代表して総会議案を提案。東京慈恵会医科大学名誉教授の小沢隆一さん、日本共産党衆議院議員の笠井亮さんが補強報告を行いました。
 総会議案と国民のみなさんへのアピール「『戦争国家づくり』を許さず、『核兵器禁止条約に参加する政府を』の声を広げよう」を採択し、86人の世話人など新役員を選出しました。
 採択した総会議案は次の通りです。


非核の政府を求める会 第38回全国総会議案

 はじめに
 2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵略・殺戮がいまも続いている。中東ではイスラエルによるパレスチナ・ガザ地区での集団殺害=ジェノサイド攻撃により、同地区の人道状況は一刻の猶予もない深刻な事態となっている。ロシアもイスラエルも核兵器の使用さえ公言して関係国・国際社会を威嚇している。第38回全国総会はかかる情勢下、国連憲章にもとづく平和の国際秩序確立のために、唯一の戦争被爆国であり憲法9条を持つわが国の市民社会の役割がますます重要となるもとで開かれる。
 今総会は、昨夏の核不拡散条約(NPT)第11回再検討会議・第1準備委員会に続く、昨年暮れの核兵器禁止条約(TPNW)第2回締約国会議、第78回国連総会の一連の国際政治の舞台で示された、〝核兵器のない世界〟実現を求める流れが国際政治の本流として力強く前進するもとで開かれる。新たな進展の拠り所であり核廃絶の〝希望の光となったTPNWの実効力、規範力をさらに強力に発揮する道は、核兵器の非人道性を広げ、国民世論を国内外でいかに発展させるかにかかっている。広島・長崎の被爆の実相を発信する被爆国日本の市民社会、わが会の存在意義はいっそう大きくなっている。
 今総会はまた、日米軍事同盟の歴史的大変質を宣言した日米首脳会談(4月)に示される岸田自公政権の「戦争国家づくり」政治と、平和とくらしのための政治を求める国民多数との乖離がかつてなく深刻となる情勢下で開かれる。内閣支持率はどの世論調査でも半年以上にわたって2割台で低迷し、岸田政権はいよいよ末期的な状況に追い詰められている。わが会は今総会で、くらしと平和のための政治を求める国民的共同を広げる諸分野の運動と結んで非核・平和の共同を探求し、「TPNWに参加する政府」「非核の政府」実現への決意を新たにする。
 来る総選挙が、裏金問題など国民の批判と怒りに追い詰められている岸田政権・自民党政治を終わらせるチャンスとなっているいま、くらし優先、TPNW参加をはじめ国民要求にもとづく新しい政治をへの運動を前進させる決意を固める総会としよう。

[Ⅰ]国際平和秩序回復、TPNW規範力の強化へ

(1)人類社会で〝希望の光〟を増すTPNW
 TPNW第2回締約国会議は、昨年11月27日~12月1日、ニューヨークの国連本部で、94ヵ国政府代表、被爆者や市民社会の代表らが参加し、「核兵器の禁止を堅持し、その破滅的な結果を回避するための私たちの誓約」という「政治宣言」を全会一致で採択して大きな成功をおさめた。同会議は、ロシアやイスラエルによる核の威嚇発言が相次ぐもとで、TPNWが核保有国の手を縛って核使用を抑える力を発揮し、実効力と規範力を高めて、〝核兵器のない世界〟へ進む〝希望〟となっていることを力強く示した。それはまさに、TPNWの発効によって、「核なき世界」へ前進する新しい時代の始まりを象徴するものでもあった。
 同会議では、「核抑止力」論に批判が集中したことが注目される。「核抑止力」論は核固執勢力の最悪にして最後の拠り所となっている。これに対し、採択された「政治宣言」は「核兵器は平和と安全を守るどころか、強制や脅迫、緊張激化の政策手段となっている」と痛烈に批判した。各国政府代表からも「抑止力」批判が集中した。
 「核抑止力」とは、その意図は「核戦力を発動する旨の威嚇を通じて敵対的な行為(軍事的攻撃)の実行を思いとどまらせること」とされるが、その実体は戦争の「抑止」とは全く逆向きの「核脅迫力」であり「戦争力」「侵略力」である。「政治宣言」が「核兵器によるいかなる威嚇も、それが明示的なものであれ暗示的なものであれ、また状況の如何にかかわらず、明確に非難」したのは当然であった。
 「核抑止力」論を打破するうえで、「核兵器の非人道性」についていかに圧倒的な国際世論を形成するかが重要となる。核保有国、核依存国の核政策をめぐる力関係を前向きに変えるカギもここにある。その意味で、広島・長崎の被爆体験をもつ日本の政治、社会が果たすべき役割は格段に重いものがある。
 このとき、唯一の戦争被爆国である日本の政府は、締約国会議にオブザーバー参加することさえ見送った。NATO加盟国を含む35ヵ国がオブザーバー参加したにもかかわらず、である。これが被爆者・国民に対する背信であることは明らかであり、世界にも「日本がいないのはおかしい。不思議な国」と失望を広げた。岸田政権が唯一の戦争被爆国の国際的責務にも、国民多数の声にも背を向けてTPNW反対に拘泥し続けるからには、国民の声と運動で同条約に参加する政府の実現を急ぐほかない。

(2)世界を分断・対立させる軍事ブロックの今日的害悪
 ロシアがウクライナへの侵略を開始して2年3ヵ月余、プーチン政権は撤退を求める国際社会の声を無視していまも侵略を続けている。ロシアによる病院、学校、住宅などへのミサイル、砲弾、自爆型ドローンによる無差別攻撃によって、ウクライナ市民1万600人余(うち子ども約600人)が命を奪われ、約2万人が負傷した。人口の4分の1にあたる約1000万人が長い避難生活を強いられている。中東では、人口約220万人のガザで2万8000人以上が殺されている。その4割が18歳未満の子どもだった。7万人近くが負傷し、8000人以上が行方不明となっている。多くの女性、子どもが「病気、栄養失調、戦闘という三重の死の脅威」(ユニセフ)に晒されている。まさにウクライナでもガザでも、人道問題は深刻な危機に直面している。
 結成いらい一貫して最悪の非人道兵器である核兵器の廃絶を求めている当会は、国際人道法を踏みにじる蛮行を断固糾弾し、ウクライナからのロシア軍の即時撤退・戦争終結、ガザ攻撃中止と即時停戦を関係国に強く求める。
 ウクライナ侵略とガザ危機を解決するためにも「国連憲章を守れ」の一点で国際社会が団結することが求められる。国連総会は、4度にわたってロシアの即時撤退などを求める決議を採択した。イスラエルの即時停戦を求める決議も153ヵ国の賛成で採択されている。ロシアでは戦場に動員された人の妻や母親たちが「プーチ・ダモイ」(我が家への道)と名付けたネットワークを立ち上げ、夫や恋人、息子を返せと訴えている。イスラエルによるガザ地区でのジェノサイドには、世界各地で抗議の声が上がり、アメリカでは全米の大学生が抗議デモを実施し、日本国内でも抗議の声が広がっている。
 このときバイデン米政権が、ロシアのウクライナ侵略に対しては「民主主義対専制主義」の価値観を押し付けて世界を分断し、他方、中東ではイスラエルのガザ攻撃を擁護するダブルスタンダードをとっていることは断じて許されない。バイデン政権がロシアの侵略を最大限利用して、北大西洋条約機構(NATO)の強化、対中国包囲網の軍事同盟・核軍備の強化を進めていることも重大である。ロシアのプーチン大統領が核使用を公言して欧米諸国を威嚇している。軍事ブロックは世界の分断を固定化する土台(体制)となり、平和秩序を確立する障害となるばかりか、核戦争を誘発・拡張する危険性を内在させていることをきびしく指摘しなければならない。
 とりわけ日米軍事同盟は、米核戦力をコア(核)とする米軍事戦略に追随し、有事の核持ち込みを容認する日米「核密約」で結ばれた、世界でも特異な、危険な軍事同盟となっている。「沖縄核密約」により、「沖縄に現存する核兵器の貯蔵庫、すなわち嘉手納、那覇、辺野古、ナイキ・ハーキュリーズ基地を、いつでも使用できる状態にしておき、重大な緊急事態が生じた時には活用できる」とされ、この核攻撃の即応体制は現在も温存している。嘉手納基地には核攻撃能力を持ち、米本土で核投下試験を行っていたF15戦闘機が配備されている。
 日米同盟下、首都を含む日本全土に米軍基地が張り巡らされている。4月の日米首脳会談での米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化や事実上の軍事同盟である米英豪の「AUKUS」(オーカス)への協力などは、憲法9条を踏みにじり、日米同盟をかつてなく危険なものに変質させようとするものである。さらに、日本の大軍拡と南西諸島でのミサイル配備などの軍事基地強化、米国や韓国、オーストラリア、フィリピンなどとの合同軍事演習が、インド太平洋地域、東アジアの軍事緊張を高めていることは重大である。

(3)国連憲章にもとづく国際平和秩序構築の流れ
 国連の安全保障理事会がアメリカやロシアなどが拒否権を行使する一方で、多くの非核保有国が、国連憲章、国際法に依拠した国際秩序構築の大きな流れを示している。1月にウガンダで開かれた第19回非同盟運動(NAM)諸国首脳会議の「カンパラ宣言」は「国連憲章と国際法」の尊重推進を掲げ、「第一義的な多国間組織である国連の強化」をうたっている。グローバルサウスや東南アジア諸国連合(ASEAN)は第78回国連総会などで国際協力の再建を訴えている。ASEANは「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)を推進し、東南アジア友好協力条約(TAC)にもとづく東アジアの平和構築を提唱している。
 国際平和秩序の確立にとって、また〝核兵器のない世界〟を実現するうえで、国連憲章のもとでの多国間主義をめざす国連改革が切実となっている。東アジアの平和を構築するためにも、日米〈核〉軍事同盟にもとづく戦争準備ではなく、ASEANと協力して中国や北朝鮮との対話と地域のすべての国を包む外交による平和の追求こそが求められている。

 [Ⅱ]アメリカ言いなりの「戦争国家づくり」反対、「非核の政府」実現へ

(1)「戦争する国」づくり政治の危険と国民との矛盾の激化
  岸田自公政権は、安保法制に対する国民の強い反対を無視して、2022年暮れに「安保3文書」を閣議決定し、敵基地攻撃能力の強化、23年度から5年間に43.5兆円にもなる軍事費増額、米製兵器の爆買い、重要産業基盤強化法の制定、「防衛装備移転三原則」改定、英伊と共同開発する次期戦闘機輸出の閣議決定と共同開発管理機関(GIGO)設置条約の締結、重要経済安保情報保護・活用法(経済秘密保護法)の成立強行など日米同盟の絶対化、アメリカ言いなりの大軍拡政治を押し進めている。今年4月の日米首脳会談では、米軍と自衛隊の司令部機能の強化と「シームレスな統合」を宣言した。民意無視の辺野古の米軍新基地建設強行、南西諸島での自衛隊ミサイル基地化、全国の自衛隊基地の地下化・強靭化、欠陥機オスプレイの飛行再開などを強行している。自衛隊の幹部による靖国神社への組織的参拝などにより統制を強化する一方で、自衛隊内ではセクハラ・パワハラが頻出し、複数の裁判で断罪されている。
 今年1月1日の能登半島地震など頻発する自然災害は、軍事力に依存しない平和な国づくりにより被災者が希望の持てる復旧・復興、防災対策を充実させることの重要性を教えている。この間、改憲勢力は自衛隊による災害救援活動を強調することで憲法に自衛隊を明記する9条改憲の必要性を強調してきたが、災害対応を口実にした改憲論を厳しく批判しなければならない。
 自民党の「裏金」事件は、その底知れぬ組織ぐるみの金権腐敗体質を改めて明るみに出した。かつてのロッキード事件やリクルート事件など相次ぐ汚職に反省することなく選挙制度改悪、企業・団体献金の存続と政党交付金の導入が、今日の悪弊を生み出した。にもかかわらず当時の「政治改革」の見直しには一切触れようとしない岸田政権は、一部の野党も巻き込んで政治資金規正法の微修正で幕引きを図ろうとしている。4月28日の3つの補欠選挙の勝利に続き、来るべき東京都知事選挙の勝利で市民と野党の共闘を再構築して岸田政権を退陣に追い込み、総選挙で自民党政治を終わらせなければならない。

(2)TPNWに参加する日本政府を実現しよう
 日本政府は、唯一の戦争被爆国として、TPNWがめざす「核兵器廃絶という目標を共有する」と事ある度に発言する。一方で米国の核兵器先制使用をふくむ軍事戦略によって自国の安全を守る「拡大核抑止」(「核の傘」)に依存することを4月の日米共同声明でも表明している。米国の「核抑止力」=「核の傘」に依存する安保政策を採る日本政府には、真摯に核兵器廃絶を目標とする政治的意思はない。日本政府が過去2回にわたってTPNW締約国会議への出席を拒み、国連総会でTPNW促進決議に毎年反対し続けている行動がそれを裏付けている。
 日本世論調査会が実施した「平和」に関する全国郵送世論調査(2023年6~7月)によれば、61%の人が日本はTPNWに「参加するべきだ」と回答している。その理由は、「唯一の戦争被爆国だから」が最多の62%、「核兵器廃絶につながるから」が29%であった。国民多数派は、唯一の戦争被爆国として日本がTPNWに参加し、核兵器廃絶に尽力することを求めている。実際、県・市区町村計1788自治体のうち38%、676自治体議会がTPNWへの参加を求める意見書を採択している(2024年3月27日現在)。今やTPNWをめぐる日本政府と国民との乖離は甚だしい。
 ビキニ被災事件から70年を迎える今年2月、原水爆禁止日本協議会(日本原水協)は「非核日本キャンペーン」(「ビキニ被災70年から被爆80年へ―非核日本をめざす全国キャンペーン」、今年3月1日~来年8月末日)を提起した。このキャンペーンは、広島・長崎の被爆者、ビキニ被災の被害者とともに原爆展・ビキニ被災展を開き、「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名」の大飛躍で、世論を喚起して日本政府のTPNWへの参加の実現をめざすものである。同時に世界の反核平和運動にも呼びかけ、まだTPNWに参加していないすべての国が参加することをめざすものである。キャンペーンの核心は、核兵器の非人道性を日本と世界の人々に伝え、人類の安全を保証するものが「核対核」「軍事対軍事」の対立ではなく、核兵器の廃絶であることを共通の理解にすることである。原水爆禁止世界大会実行委員会は日本原水協の提起を真摯に受け止め、キャンペーンを成功させるべく奮闘している。日本政府のTPNW参加の実現を求める「核兵器廃絶日本NGO連絡会」が母体となる「核兵器をなくす日本キャンペーン」も発足している。わが会は、「非核日本キャンペーン」をはじめ、非核・平和団体、個人との共同、連帯の発展に尽力する。
 わが会は、日本政府に対し、以下の諸点を中心に、唯一の戦争被爆国にふさわしい「非核の政治」を行うよう求めるとともに、これらの政策を実行する政府をめざす。
 ○核兵器禁止条約に速やかに署名・批准し、核保有国を含む国連全加盟国に同条約加盟を促す。
 ○核保有国に対し、NPT再検討会議の「核兵器廃絶合意」の誠実な履行を求める。
 ○原爆被害の非人道的な実態を世界に発信し、核兵器はいかなる状況下でも二度と使用されてはならないことを世界に訴える。
 ○被爆者施策の抜本的改善、原爆被害への国家補償に踏み切る。
 ○核兵器使用の脅迫力=米「核抑止力」政策(「核の傘」)から離脱する。
 ○「非核3原則」を厳守し、非核の日本を実現する実効性ある措置を講じる。
 ○日米「核密約」を公表し、これを破棄する。
 ○朝鮮半島非核化・平和体制実現にむけたプロセス再構築のために寄与する。

(3)憲法改悪、学術会議法改悪を許すな
 岸田首相は、年頭から「任期中改憲」を繰り返し表明し、3月の自民党大会では「今年中の改憲」の方針を打ち出した。9条改憲、緊急事態条項導入、議員任期延長に執念を燃やす改憲派は、国会の憲法審査会を舞台に改憲案づくりを画策し、衆議院では憲法審査会内への「条文起草作業機関」設置や改憲派だけでの条文案策定を企んでいる。「非平時」での国の関与を拡大する地方自治法改悪は緊急事態改憲の先取りとして、断じて許されない。国際情勢が緊迫する中で「平和を希求し平和に備えよ」との広範な市民の声の拡大に依拠して、憲法改悪の企みを阻止しよう。
 2004年の国立大学法人化、2014年の学校教育法改正などにより、大学の教授会の権限が縮小され、学長権限が拡大した。「選択と集中」の政策により大学予算が毎年1%削減され続け、競争的資金が拡大し、「大学ファンド」の運用益を原資とする「国際卓越研究大学」制度が設立され、大学間格差が拡大している。2023年の国立大学法人法の改正では、政府と産業界の目付け役となる「運営方針会議」を国立大学内に設置することも強行された。これらは、大学を軍事研究に利用する動きと軌を一にしている。5月に強行制定された経済秘密保護法は、大学、研究機関、民間企業の軍事動員の強化策である。

(4)原発回帰政策の危険性と福島第一原発の現状・課題
 今年1月1日に発生した能登半島地震では、多くの家屋が損壊し、大勢の方が避難生活を余儀なくされた。土砂崩れや隆起・ひび割れなどによって道路が寸断され、港内が隆起して船が接岸できず、避難することにも、救助に駆けつけることにも、深刻な困難を生じた。もし、志賀原発で、地震・津波により重大事故が発生し、放射性物質が環境に放出されていたら、放射性物質に曝されるのを防ぐための速やかな避難もできず、屋内退避もできないという深刻な事態に至ったおそれがあった。避難計画が、文字通り「絵に描いた餅」「机上の空論」であることが証明された。
 この地震を機に、石川県だけでなく、全国の原発所在地の方々が、現状の地震・津波の想定の妥当性に疑問を抱き、地震・津波と原発事故が重なった複合災害の重大な危険性を再認識することとなった。どの地域でも、現状の避難計画ではこのような複合災害は想定されていない。
 新規制基準に適合しても重大事故の可能性がある状況にもかかわらず、原発回帰政策に転換した政府が全面に立って原発の再稼働を加速させ、新増設まで企んでいることは許されない。二度と原発事故で被災しないためには、早急に全国の原発の運転を停止し、省エネ・再エネへの転換で脱炭素・原発ゼロの日本をつくることこそ、最も現実的で根本的な解決策である。
 2011年3月に発生した福島第一原発事故は現在でも収束しておらず、被害は継続している。いまだに避難を強いられている地域があり、避難解除された地域でも必ずしも帰還した住民は多くない。何よりも、多くの失われたことは容易に元に戻ることはない。事故を起こした1~3号機の廃炉は、未だに燃料デブリの取り出しに着手できず、遅々として進んでいないにもかかわらず、政府と東京電力は、予定通りの時期に廃炉は完了するとしている。昨年8月からは、漁業関係者をはじめとする多くの国民の反対を無視し、アルプス処理水の海洋放出を強行した。直ちに海洋放出を中止し、タンク保管の継続、広域遮水壁を早急に設置して地下水の原子炉建屋への流入を阻止するなど、英知を結集すべきである。汚染水処理や廃炉で発生する放射性廃棄物の処分も難題である。これらの後始末をどのようにすべきかについて、福島県民をはじめ、国民の間での真摯な議論を優先することが求められる。

(5)ジェンダー平等、多様性が生きる社会
 TPNWは、放射線が女性、少女に偏って大きな影響を及ぼすことを指摘するとともに、「女性と男性の双方による平等、完全かつ効果的な参加は、持続可能な平和及び安全の促進と達成にとって不可欠な要素であることを認識し、女性の核軍備撤廃への効果的な参加を支援し強化することを約束」すると明記している。
 TPNW第1回締約国会議は、ジェンダー関連条項を踏まえた条約の実施を確認し、フォーカル・ポイントを任命した。第2回締約国会議への報告では、核兵器廃絶の実現には条約の意思決定に女性が参加しリーダーシップを発揮すること、条約実施のすべての分野にジェンダーの視点を取り入れることがカギだとあらためて強調した。次回締約国会議までに、ジェンダーに配慮した核被害者支援プログラムや、核被害を受けている地域社会の女性たちから核兵器の影響の違いやニーズを聞き取ることなどの作業が進められる。
 かたや日本のジェンダー平等度は、世界経済フォーラム作成のランキングで2023年は146ヵ国中125位と過去最低に落ち込んだ。国会議員比率で世界164位という大きく遅れた女性の政治参加と、男女賃金格差などの経済分野での遅れが大きな要因だが、他の国々が行っている差別禁止や格差是正、政治分野でのクォータ制導入など具体的な政策や法整備が進んでおらず、政治的意思の欠如が決定的である。財界の要求に従い、非正規化と社会保障の負担増を進めてきた結果、女性雇用者の非正規の割合は5割を超え、低賃金、低年金で女性の貧困化が深刻な問題となっている。
 性差別や性暴力、ハラスメントは許さないと当事者の告発と連帯の行動が広がり、多様性の尊重、ジェンダー平等を求める声は日本でもかつてなく高まっている。一方、古い家族観を良しとしジェンダー平等に反対する日本会議や旧統一協会と癒着した勢力は、選択的夫婦別姓や同性婚は絶対に認めず、憲法改悪や大軍拡を推進し、核兵器廃絶にも背を向けている。女性たちは生きづらさやくらしの大変さが自民党の悪政によるものだということを見抜き、「さよなら自民党政治」と声をあげ始めている。
 核抑止と軍事優先の安全保障と人権、ジェンダー平等は両立し得ない。世界が複合危機に直面する今、国連憲章とSDGs(持続可能な開発目標)がめざす方向へのシステムチェンジが急務であり、女性や多様な人々が意思決定に参加し政治のあり方を変える必要がある。この点でも、TPNWに参加する政府の実現が求められている。

[Ⅲ]「非核の政府を求める会」の課題と役割

(1)「非核の政府を求める会」運動の今日的役割
 TPNWが発効して3年半となり、その実効力と規範力が高まるもとで、当会の役割は、ますます重要となっている。ロシアのプーチン政権が「核使用の威嚇」を繰り返し、バイデン米政権も核軍事同盟体制を強化している。核戦争の不安と日本の核戦場化の危険を除去したいと願う人々によって結成された当会の存在意義の発揮が強く求められている。わが会は1986年5月の結成以来、「核抑止力」論を批判し、次の「非核5項目」にもとづく政府の実現を求めて情報発信、世論喚起に努めてきた。
 ①全人類共通の緊急課題として核戦争防止、核兵器廃絶の実現を求める
 ②国是とされる非核三原則を厳守する
 ③日本の核戦場化へのすべての措置を阻止する
 ④国家補償による被爆者援護法を制定する
 ⑤原水爆禁止世界大会のこれまでの合意にもとづいて国際連帯を強化する
 「非核5項目」の内容の多くはTPNWの前文および各条文に反映され、それゆえTPNWに参加し、同条約を履行する日本政府が誕生すれば、わが会がめざす「非核の政府」実現への大きな接近となる。
 今日、核兵器禁止・廃絶を求める国民世論と共同は着実に発展している。日本政府にTPNW参加を求める自治体の意見書・決議は676自治体(3月14日現在)となり、「非核宣言自治体」も、全自治体の93.2%、1667自治体に上っている(5月13日現在、日本非核宣言自治体協議会調べ)。このことは、自治体の権能(行政・議会)と市民の良心が結びついた草の根の底力を象徴的に示している。
 気候危機打開の運動が世界中に広がり、日本の若者たちも声を上げている。「核兵器のない世界」をめざす運動が「人類の未来」を守る多様な運動と連帯・共同する可能性を広げている。
 TPNWに背を向け、バイデン米政権いいなりに大軍拡を進める岸田政権は、自民党の裏金問題や経済無策などに対する国民の怒りに追い詰められている。被爆80年に向けて「TPNW参加の政府」実現を求める国民的共同を発展させるために会の役割を発揮するときである。
 わが会は、当面次の諸活動の前進をめざして奮闘する。

(2)当面の諸課題
①「TPNWに参加する日本政府」の早期実現めざす国民的共同を「自民党政治を終わらせる国民運動」とともに追求
 TPNWに背を向けるとともに、アメリカの核政策に追随して大軍拡を進め、くらしや気候危機問題にもまともに向き合わない自民党政治を終わらせる国民的な運動とも呼応して、日本政府にTPNWへの参加を求める国民的な合意形成、世論喚起が重要になっている。
 わが会は、「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名」の推進に力を尽くす。
 わが会は、引き続き、核兵器政策をめぐる日本政府の危険な言動に対して機敏に対処するとともに、非核・平和にかかわる重要問題で政府に要請する。
 「新春メッセージ」、インタビュー等を通じ、各界識者との共同の拡大を追求する。

②シンポジウム、「核問題調査専門委員会」の充実
 この間、2024年新春シンポジウム「核廃絶化、核抑止か――前進する核兵器禁止条約、問われる被爆国の責任」(1月8日)を開催してきた。引き続き、非核・平和の重要テーマを中心に、シンポジウムや講演会等に取り組む。
継続的な核問題調査専門委員会活動の調査・研究活動は、わが会の特色をなすものである。この間、TPNW締約国会議やNPT再検討会議の成果をめぐり、外部から講師を招き、各地の非核の会ともオンラインで結んで開催したことなどを教訓に、今後さらに専門委員会活動の質的・量的発展をはかる。
〈専門委員会の当面のテーマ〉
▽「安保3文書」、▽「敵基地攻撃能力」論、▽「核共有」論、▽日米「核密約」、▽「核抑止力」論、▽日本国憲法と「非核の政府」、▽世界の核兵器状況・核兵器政策、▽バイデン米政権の戦略・核兵器使用政策、▽核兵器条約、▽日本政府の原発・エネルギー政策批判、▽原発事故処理問題、▽放射性廃棄物の処分問題、▽朝鮮半島の非核・平和プロセス。

③原水爆禁止2024年世界大会の成功と「非核日本キャンペーン」の前進をめざす
 被爆80年となる2025年8月末に向けて「ビキニ被災70年から被爆80年へ―非核の日本をめざす全国キャンペーン」(「非核日本キャンペーン」)の取り組みが進められている。原水爆禁止2024年世界大会が8月3日~9日、被爆地の広島・長崎の現地参加を中心に、オンライン参加と併用で開かれる。今年の世界大会は、侵略戦争と核の威嚇、軍事ブロック拡大を許さず、紛争の平和的解決と平和・核兵器廃絶の流れが各国でも国際政治の舞台でも大きく立ち上がるなかでの大会となる。また、NPT第11回再検討会議第2回準備委員会(24年7/22~8/2)とともに、TPNW第3回締約国会議(25年3/3~7)の成功に向けて被爆国の市民社会のメッセージを発信し、内外の世論と共同を広げる大会となる。
 わが会は、「非核日本キャンペーン」の前進とともに、日本政府にTPNW参加を求める世論形成の節目ともなる世界大会が大きく成功するよう、取り組みを強める。

④被爆者支援・連帯活動の発展
 TPNW第2回締約国会議では、第6条、7条の被爆者と核実験被害者への支援、環境修復の活動の具体化が強調された。日本政府の対応が鋭く問われている。TPNWが発効したもとで、〝被爆者の国家補償を〟〝現行の認定制度の抜本的改正を〟という被爆者の要求の速やかな実現のために、被爆者運動への支援・連帯を強めることがますます重要となっている。
 「黒い雨」訴訟に対し、日本政府は、原告全員を被災者と認定した広島高裁判決を蹂躙して認定要件に疾病条件を加えて被爆者を分断し、高齢の被爆者に耐えがたい負荷を強いている。わが会は、政府の改心なき冷酷な被爆行政に強く抗議する。ひきつづき広島・長崎のすべての「黒い雨」と「被爆体験者」の救済を求める運動に連帯し、支援を強める。

⑤非核宣言自治体協議会、平和首長会議はじめ非核自治体運動との連帯・共同強化
 非核自治体宣言運動、非核・平和自治体行政の発展を引き続き追求するとともに、「核兵器禁止条約を支持し、日本政府に署名を求める」意見書採択など、自治体から合意と共同を広げる。また、地方自治法の改悪など自治をないがしろにする動きを許さないための連帯・連携を強める。
 平和首長会議、日本非核宣言自治体協議会との連帯・共同を発展させる。

⑥会の組織的化のために
・賛同団体や地方の会との意見交換、懇談を進める。
・再建・再開をめざす地方の会への協力・援助をはかる。
・昨年11月にリニューアルしたホームページを活用した情報発信に努力する。
・「核の政府を求める会ニュース」の情報発信力向上に向けて、紙面改善をはかるとともに、普及に努める。