原水爆禁止2023年世界大会・長崎開会総会
=8月7日、長崎市・市民会館体育館

 8月5日、原水爆禁止2023年世界大会・国際会議で採択された宣言は次の通りです。

原水爆禁止2023年世界大会・国際会議宣言(全文)

 世界はいま、ウクライナでの戦争と核威嚇など核兵器使用の現実の危険が高まる重大な情勢に直面している。世界から広島の地に集った私たちは、被爆者とともに訴える。核兵器は、いかなる状況においても、決して使用されてはならず、そのすべてを一刻も早く完全に廃絶すべきである。
 78年前の8月6日と9日、アメリカ軍が広島と長崎に投下した原子爆弾は、瞬時にして両都市を破壊し、人類が体験したことのない、「この世の地獄」と言われる惨状をもたらした。1945年末までに21万人の命が奪われ、かろうじて生きのびた被爆者たちも、放射線による疾病をはじめ後遺症に苦しみ、社会的、経済的差別をうけた。この悲劇を決してくり返させてはならない。
 世界には今なお約1万2500発の核兵器が存在している。その廃絶は、人類の死活にかかわる緊急の課題である。

 ロシアのプーチン政権は、侵略と核兵器による威嚇を直ちにやめなければならない。核兵器への固執をつづけるアメリカ、イギリス、フランス、中国など他の核保有国の責任も重大である。核兵器の使用とその威嚇は、紛争の平和的解決を定めた国連憲章の原則を正面から踏みにじるものであり、その廃絶こそが国連総会第1号決議に沿ったすべての国の責務である。
 G7広島サミットが「核抑止力」論を公然と主張し、被爆者と被爆地を愚弄したことは、断じて許されない。今年7月に開かれたNATO首脳会議は、安全保障にとって「核兵器が唯一無二の存在」だとし、核兵器にしがみつく態度を改めて表明した。
 NATOの拡大やアジア・太平洋地域での軍事連携強化など、アメリカを中心とした軍事ブロックの強化は、世界を分断し、軍事対軍事、核対核の危険な悪循環をつくりだし、事態を一層悪化させている。北朝鮮が国連安保理決議に違反してミサイル実験を繰り返している。日米韓も「核抑止力」を含む軍事的対抗を強化している。これによって朝鮮半島をめぐる状況はいっそう危険なものとなっている。

 核大国が核軍縮に背を向けるなかでも、核兵器禁止条約を力にした世界の流れはひきつづき発展している。条約には68ヵ国が批准し、署名国は92ヵ国と国連加盟国の半数に迫っており、締約国を広げる努力もつづいている。このゆるぎない流れは「核兵器のない世界」をめざす、大きな希望である。
 核兵器禁止条約は、国際社会が一致し、市民社会と共同するならば、世界を動かす大きな力を発揮しうることを示した。この国際的共同をさらに発展させるとともに、各国政府に条約参加を迫る運動を強化することが、「核兵器のない公正で平和な世界」を実現する道である。

 我々は以下のことを要求し、各国の運動と国際的な共同を発展させる。
——核兵器の使用とその威嚇は、国連憲章と国際人道法に反するものであり、いかなる状況のもとでも決して許されない。すべての国がこれを厳格に守ることを強く求める。核兵器によって安全をはかろうとする「核抑止力」論はいかなる理由によっても決して正当化し得ず、断固として退けられなければならない。
——核兵器禁止条約は、核兵器使用と核実験の被害者への支援など、第1回締約国会議で策定された「行動計画」の具体化と実践がはじまり、国際法として機能しつつある。11月27日からニューヨークで第2回締約国会議が開かれる。締約国とも協力して、すべての国が条約を支持し、参加することを求める。
——2026年の第11回核不拡散条約(NPT)再検討会議にむけた準備がはじまった(第1回準備委員会、7月31日〜8月11日、ウィーン)。すべての締約国、とりわけ核兵器国が条約第6条の核軍縮交渉義務と、核兵器廃絶の「明確な約束」をはじめとする再検討会議の累次の合意を誠実に履行することを強く求める。
——非核地帯の強化と拡大を求める。核保有国はこれらの条約の実効性を担保しなければならない。中東非核地帯の実現にむけた努力を歓迎し、その早期実現を求める。北朝鮮は核兵器、弾道ミサイル開発を止め、すべての関係国に朝鮮半島の非核化と平和の実現にむけた努力を再開することを求める。南シナ海、東シナ海での地域の緊張は一方的行動によらず、外交的・平和的に解決するよう求める。
——ロシアはウクライナへの侵略を直ちにやめ、すべての軍隊を撤退させなければならない。原発を軍事標的にするなど国際人道法に反する行為は許されない。国際社会は、世界の分断に抗して国連憲章の擁護で団結し、国連総会決議に基づく解決を求めるとともに、平和と公正を求める努力を支持し、平和の秩序の再建・強化に力を尽くすべきである。軍事的な対立と分断を深め、問題の解決を阻害する軍事ブロックにもとづく対応をやめるべきである。地域紛争を国際法にもとづいて、平和的に解決することを求める。仮想敵をもたない包摂的な枠組みこそ、すべての国の安全を共通に保障する。軍事費の増大に反対し、大幅な削減を要求する。

 G7サミットが「核抑止力」論を公然と主張したことについて、議長国であった岸田政権の責任はきわめて重大であり、恥ずべきものである。被爆地からの真のメッセージは、核兵器のすみやかな廃絶である。ヒロシマ・ナガサキを体験した日本が、アメリカの「核の傘」への依存をあらため、核兵器禁止条約を支持し、参加することを強く求める。
 岸田政権は、アメリカの「核の傘」への依存をいっそう深めるとともに、「抑止力」の強化を口実に、憲法違反の大軍拡と「敵基地攻撃能力」保有に進もうとしている。沖縄をはじめとする南西諸島の軍事化など、日本はアメリカの対中戦略の最前線基地にされようとしている。さらには、アジアとNATOを結び付ける中心的役割を果たそうとしている。これらの根本には、日米軍事同盟を絶対視する政治がある。我々は、日本政府が唯一の戦争被爆国として、また戦争放棄の憲法を持つ国として、それにふさわしい行動をとることを求める日本の運動に連帯する。
 我々は、世界の反核平和運動に以下の行動をよびかける。
——ヒロシマ・ナガサキの被爆の実相をはじめ、核兵器使用と核実験の非人道的な結末を普及し、核兵器廃絶を共通の要求とする国際的な共同行動を成功させよう。日本と韓国の被爆者や世界の核被害者の活動を支援しよう。
——核兵器禁止条約の非締約国、とりわけ、核保有国や「核抑止力」に依存する国々で、条約への支持・参加を求める運動を強めよう。
——第78回国連総会、核兵器禁止条約締約国会議、NPT再検討プロセスなどを節目に、各国の運動を大きく結集し、諸国政府と市民社会の共同を発展させよう。禁止条約第2回締約国会議に呼応した国際共同行動を成功させよう。
——軍事費の削減、外国軍事基地の撤去、軍事同盟の解消、枯葉剤など戦争被害者への補償・支援と被害の根絶、平和教育の推進、国連憲章の原則に基づいたウクライナにおける戦争の終結など、様々な平和運動との共同を発展させよう。
——くらしと命、人権を守り、原発ゼロ、気候危機の打開、ジェンダー平等、自由と民主主義を求める運動など、多様な運動との連帯を発展させよう。
 今日の重大な情勢を打開するうえで、諸国民の世論と運動が決定的である。我々は、被爆者とともに、そして常に新しい若い世代の参加の輪を広げ、前進する決意である。