「国連第一委員会の議論の特徴」について論議

        土田 弥生 原水爆禁止日本協議会事務局次長

 非核の政府を求める会核問題調査専門委員会が12月18日、オンラインで開かれ、日本原水協事務局次長の土田弥生さんが、「国連第一委員会の議論の特徴と核保有国フランスでの被爆者遊説に参加して」と題して報告しました。紙面の都合から「国連第一委員会の議論」に絞って土田さんの報告要旨を紹介します。(文責編集部)

 核保有国と同盟国は、「核兵器は自国の安全保障にとって不可欠」だが、しかし、他の国には核兵器を持たせないということで二重基準とも言えるものです。そして、「核抑止力は国際法と両立する」と言っています。軍縮を否定して、大軍拡、軍事費増大、自国ファースト、そして国連も否定するという特徴があります。この軍拡と軍事費増大については、本当に多くの国が批判していました。
 アメリカは、たくさんの反論をしていますが、「アメリカの拡大抑止は成功している。だから同盟国の誰もが核兵器を持とうとしていない」ではないかと言っています。そして、「NATOの核共有はNPTに準じている、NPT第1条、第2条違反ではない」と言っています。
 また、自分たちは軍拡競争を防ぎたいと思っているが、中国とロシアが軍備を増強している、とくに中国は透明性がない。だからできないと言っています。反論の中に「トランプ大統領は核兵器を削減したいと思っている」「第6条の義務を果たす、ロシア・中国にもやらせないといけない」と書いてありました。第6条の義務は核軍備撤廃なので、アメリカはなぜこういうことを言っているのか、自分たちの都合のいいように解釈しているのか、私の疑問です。
 

 圧倒的多数の非核国が核抑止、核共有を批判しています。マレーシアは、「核兵器は責任をもって保有することができるし、賢明に扱うことができるという意見に反対しなければならない」と言っています。モザンビークは、「限定的核攻撃」ができるとの主張は無謀である、核戦争を起こすと言い、核保有国らは、核兵器は究極の安全保障との意見を出しているが、これは多数の国を脆弱な軍備管理体制の危険と不拡散の強制にさらすことになると言っています。
 核兵器禁止条約の締約国が共同声明を出していて、「核兵器が本質的に有するリスクと国境を越えて広がる壊滅的な影響は、あらゆる国家の安全保障が脅かされていることを明らかにしており、したがって全ての国家が核兵器の完全廃絶に差し迫った安全保障上の利益を有していることは明らか」だと言っています。
 南アフリカは、「核兵器を取得せず、また保有を志向しないことを自らに課した大多数の国々が、核兵器の使用および実験による壊滅的な結果を被らねばならないということは正当化できない」と言っています。
 今回の議論の中では、AIとか最新のテクノロジーが兵器システムに軍事的に利用されることに対する懸念が表明されました。とくにAIが核指揮統制通信能力(N3)に導入されると、AIが核攻撃を決定する事態になるわけで、それに対してNA3システムへの人間の管理を求める決議を出しています。これには多くの国が賛同しています。

 国連軍縮担当上級代表の中満さんは、2024年の軍事費は2.7兆米ドルにも達していて、戦争と紛争で甚だしい人的被害が生じていると言っています。そして、戦後80年は、国連の能力や有効性、正当性が問題になって、国連が素早く有効な動きができるようにするUN80イニシアティブを事務総長が提起しているということです。けれども、アメリカが国連に対して金を払っていないということで、国連の人員を削減しなくてはいけない状況です。
 多くの国の批判のポイントは、人間の福利とか人間の安全保障を犠牲にして、軍事に膨大なお金を支出することは資源の無駄であると、いまの急速に増えている軍事費に対する警告を発しています。
 オーストリアのクメント大使の発言が多数の非核国を代表するものとなっています。国際安全保障体制、国際法、国連創設の理念である多国間主義と国際協力への前例のない挑戦が行われている。それによって集団的安全保障の仕組みは機能不全に陥っている。それとともに軍事支出は最高水準に達して、軍拡競争が行われている。「力こそ正義」という世界への後戻りは許さないと言っています。そして、大量破壊兵器の地球規模の脅威にもとづく安全保障の枠組みからの脱却が必要だと。そのためには、やはり核兵器の人道的影響を広げることと、核兵器禁止条約を促進することだということです。

 総会での決議の採択状況ですが、まず日本決議です。日本は、「核兵器のない世界に向けた共通のロードマップ構築のための取り組み」を出していて、賛成が147ヵ国、反対5、棄権26です。
 情勢はいろいろ書いているのですが、実効措置の一番最初は、「すべての国々、特に核兵器保有国に対し、核兵器の完全廃絶が達成されるまでの間、核兵器が二度と使用されないようあらゆる努力を払うこと、並びに核戦争を回避することがすべての国々の共通の利益であるとの認識に基づき、核兵器の使用に関する扇動的な言説を控えるよう強く求める」ということで、核兵器の廃絶は迫っていません。NPTの義務の履行に関しても、NPTの義務を履行する際に透明性とかが重要だということで、実際には核保有国に核廃絶を迫っていない内容になっています。
 日本決議に対してメキシコは、核軍縮の遅延や障害について明確な指摘がないことや、核保有国が軍縮に関して負う義務と約束の履行に条件をつける姿勢も続いていると批判しています。
 今回、アメリカは日本決議に棄権しました。日本との同盟関係に関連があるのではないと言っていますが、包括的核実験禁止条約(CTBT)とかSDGsに関連する部分に合意できないということだと思います。
 「核兵器の人道的結末」という決議については賛成135、反対11、棄権33です。「核兵器禁止条約」決議は、昨年は127の国が賛成したのですが、今回は119にまで落ち込んでいて、反対45、棄権12です。45の反対国は、NATO加盟国とアメリカの同盟国、当然日本も反対していて、韓国も反対です。東ヨーロッパの国々、ポーランドやリトアニア、北朝鮮もイスラエルも、パキスタンとかインドとかも反対しています。
 「CTBT」は、第一委員会の議論をまとめたレポートを見ると、これまでは無投票だったのですが、それをアメリカが投票にかけろと言って、アメリカのみが反対しています。核実験も再開するような発言もしており、本当に危険な状況です。
 1995年、2000年、2010年のNPT再検討会議で合意された核軍縮の義務のフォローアップの決議は賛成が112と低いです。反対の45は核兵器禁止条約に反対した国々だと思います。棄権は18です。こういう状況を見ると、来年のNPT再検討会議は、本当に世界の市民社会が頑張らなければいけないと思います。
 メキシコが中心になって出した「軍事領域におけるAIと国際の平和と安全に対する影響」は、賛成が167で、反対が5、棄権が5という状況です。 いまの世界の情勢、とくに大国の横暴の影響が色濃く反映された第一委員会だったと思います