「第7次エネルギー基本計画 原子力に係る問題点」をめぐって論議 岩井 孝 元日本原子力原子力開発機構研究員・常任世話人
非核の政府を求める会核問題調査専門委員会が3月14日、オンラインで開かれました。元日本原子力研究開発機構研究員の岩井孝さんが「第7次エネルギー基本計画 原子力に係る問題点」と題して報告し、活発に議論しました。報告の要旨を紹介します。
◆原発回帰、核燃料サイクルへの固執
今回の第7次エネルギー基本計画(以下、基本計画)は、「今後、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用することが必要不可欠」と再生可能エネルギーとセットに打ち出していますが、原発回帰というのが本質です。
基本計画では、「我が国は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度低減等の観点から使用済燃料を再処理して回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進を基本方針としている」と宣言し、「核燃料サイクルの中核となる六ヶ所再処理工場と(取り出したプルトニウムを使って燃料を作る)MOX燃料工場の竣工は、必ず成し遂げるべき重要課題」だと国として位置づけ、官民一体で取り組むとしています。
日本のプルトニウム保有の総量は2023年末現在で約44・5㌧です。利用目的のないプルトニウムを持たないとの原則を堅持し、プルトニウム保有量を適切に管理して、削減に取り組むとしています。そして、電気事業連合会が30年度までに12基の原子力発電所でプルサーマルの実施計画を示しているとし、プルサーマルをいっそう推進するとしています。
◆プルサーマルはおろかな政策
核燃料サイクルでプルトニウムを使う場合、高速増殖炉サイクルで使うことが最も有効なんですが、実際にはもんじゅは廃炉になりますし、フランスの計画も頓挫しています。高速増殖炉を使った核燃料サイクルが登場してくる可能性は非常に低いです。
元々プルサーマルは、再処理とかプルトニウムを使った燃料を作る練習の位置づけで繋ぎだったのです。もんじゅの廃炉を決定した段階で核燃料サイクルは完全に破綻しているので、撤退すべきだったんです。
電気事業連合会が30年度までに12基とする数値は、六ヶ所再処理工場で本格操業が始まったときに1年間で取り出されるプルトニウムをそのまま利用するために必要な原発の数です。しかし、昨年末現在でプルサーマルを実施しているのは4基しかありません。とても無理だと思います。
◆本音は使用済燃料の搬出先確保
プルサーマルを実施する本音は、使用済燃料の搬出先を確保することです。
使用済燃料はいま、原発のサイトと中間貯蔵施設と合わせて1万6000㌧、それから六ヶ所再処理工場のプールに3000㌧が保管されており、合計1万9000㌧です。このプールや乾式貯蔵の施設が満杯になったら、それ以上原発の運転を継続することはできません。だから、使用済燃料は再処理工場に持って行くから大丈夫だと言い続けるしかないのが今の日本の現状です。
取り出したプルトニウムは使うというのが国の政策であり、電力会社が自由に選択できるものではありません。再処理工場に持っていくから大丈夫と言っても、強制的にプルサーマルの燃料として戻ってくることがセットなんです。
◆使用済燃料の重大な問題
プルサーマルは、やればやるほどいろんな問題が出てきます。①再処理工場は、操業している定常時にも放射性物質を環境に放出する、②再処理工場が操業すると、高レベル放射性廃棄物が発生してその処分が困難、③プルトニウムが入ったMOX燃料を原発に装荷すると、原子炉の制御が不安定になる、④プルサーマル使用済燃料、使用済MOX燃料は、ウランの使用済燃料に比べて発熱量がすごく高くなり、冷えるまで時間が長くかかるので、金属製の乾式貯蔵容器に入れるまでの期間が非常に長くなる、などです。
プルサーマルの使用済燃料の最終処分場の目処はありません。
プルサーマルを使用してしまうとその使用済燃料は原発サイトで超長期保管するしかなくなり、原発の運転をやめてもプールをなくせないから原発本体を壊すことができないんです。
基本計画では、プルサーマル使用済燃料を六ヶ所再処理工場で再処理する場合を想定して、いろいろなデータとかを充実させると言っているのですが、完全に詭弁もいいところです。
◆使用済燃料をどうするのか
使用済燃料の貯蔵方法には、プールで水に沈めておく。それで10年とか15年とか冷やしたら、発熱量が低くなるのでヘリウムが入っている金属製の容器に閉じ込めてしまう二つの貯蔵方法があります。乾式貯蔵は金属製の容器に閉じ込めて建屋の中に置いておくだけの自然空冷ですから、安全対策的にポンプもファンも冷却も何も必要ありません。
基本計画では、「使用済燃料について、再処理するまでの間、貯蔵する能力の拡大が重要である」とあります。つまり、再処理工場は完成しないので貯蔵する能力を拡大するしかないのですが、プールは原子炉建屋の5階6階にあって大きくはできないので、「中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設等の建設・活用を促進する」となっています。
乾式貯蔵施設の設置には住民の多くが反対します。使用済燃料は持ち出すと言っていたのに、貯蔵施設を増設していつまでも置いておくのではないかというのが一番の懸念だからです。
◆「すべての運転停止」が大前提
原発を廃炉にしていく上で、使用済み燃料をどうするのかということが大きな問題になってきます。原発を廃炉にするのには、使用済燃料を乾式貯蔵容器に入れなくてはけないのですが、持ち出し先がなければ当面は原発サイトで保管することになります。運転を続けている原発があれば、次々と使用済燃料が増えていくわけですから、それをどうするのかの議論は始まりません。すべての原発の運転を停止し、これ以上増えないようにすることが議論をしてくための大前提だと思います。
使用済燃料は簡単に処分もできませんし、超長期の保管をせざるを得ないわけですから、事業者の責任にはなじまないといったことを考えると、事業者に思いきり費用を出させて、ある段階からは国が責任を持つ体制にしないといけないというのが私の考え方です。
