「笹川平和財団な政策提言『日米同盟における拡大抑止の実効性向上を目指して―〝核の傘〟を本物に』―を読む」をめぐって論議                 竹下 岳 「しんぶん赤旗」政治部記者

 非核の政府を求める会核問題調査専門委員会が10月23日、オンラインで開かれ、しんぶん赤旗政治記者の竹下岳さんが「笹川平和財団な政策提言『日米同盟における拡大抑止の実効性向上を目指して―〝核の傘〟を本物に』―を読む」と題して報告しました。竹下さんの報告要旨を紹介します。(文責編集部)
 

 【提言1】は、拡大抑止の運用面に関する平時の日米協議の創設です。「同盟調整メカニズム(ACM)」や「共同計画策定メカニズム(BPM)」といった、有事などでの日米共同のための意思疎通の枠組みの中に、拡大抑止、核攻撃をやる際の手順についての協議を位置づけるとあります。
 【提言2】は、非核3原則第3項の「持ち込ませず」を「撃ち込ませず」に見直すということで、「非核3原則」を「核抑止の原則」に変えてしまう狙いです。
 【提言3】は、アメリカの核戦力のICBM、SLBM(潜水艦)、戦略爆撃機と日本の通常戦力との結合です。
 もう一つはアメリカの戦術核の日本配備を日米共同で検討するとありますが、この布石はすでに敷かれていることに注意する必要があります。
 B61-12(空中発射型核巡航ミサイル)はF35Aステルス戦闘機に搭載するものです。F35Aはすでに嘉手納基地にローテーション配備が始まっています。
 LRSOは、核巡航ミサイルでB52やB2戦略爆撃に搭載されます。B52は一昨年、昨年と連続して横田基地に着陸しており、年に何回も自衛隊との共同訓練をやっています。
 SLCM-Nは核トマホーク(TLAM-N)の後継ミサイルですが、実戦配備されれば、日本に寄港している米原子力潜水艦に搭載され、核持ち込みが再開される危険があります。
 地上発射型の核搭載戦域射程ミサイルは、現時点で具体的な姿は見えていません。ただ、タイフォンという地上から射程1600㌔のトマホークが発射可能な車両型のシステムが先月、日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン2025」で岩国基地に持ち込まれました。タイフォンは、2021年、射程500~5500㌔の地上発射型ミサイルの全廃を定めた中距離核戦力全廃条約(INF)が失効したことを受け、米国が中国の核ミサイルを抑止するために開発したものです。防衛省は訓練が終わったら撤収すると説明していましたが、11月に入っても岩国基地に置きっぱなしになっています。日本に置かれると中国も当然対抗措置をとることになり、この地域における核軍拡を加速する要因になります。中国は、タイフォンは核兵器搭載可能だとみなして警戒を強めています。

 【提言7】は、核持ち込み・核共有を視野に入れて米軍の核部隊に自衛官を派遣するというものです。自衛隊による日米の核運用協力への貢献として、具体的には米軍の爆撃機護衛、空中給油、原子力潜水艦の護衛といったものです。
 非核3原則の見直しでは、SLCM‐Nを搭載した原潜の寄港容認、もう一つが航空自衛隊F35Aの核・非核両用化(DCA)で核攻撃能力を加えるという話です。
 それから「核共有」(ニュークリア・シェアリング)です。「平時」は米空軍が核弾頭を管理し、「有事」になれば米大統領の承認を受け、各国空軍の戦闘機に核ミサイルを搭載するという、NATOで採用されている枠組みを日本でも導入するというものです。航空自衛隊の戦闘機にアメリカの核ミサイルを積んで、まさに核攻撃となれば、航空自衛隊が核ミサイルのボタンを押すという態勢を提案しています。そのために、核弾頭貯蔵施設を三沢に建設するとしています。
 【提言10】は、早期警戒情報取得及び日米間の意思決定システムの整備」ですが、実際に核攻撃の段階になれば、極めて短時間での判断となるため、事実上日米間で協議することはなく自動承認になると思います。
 【提言12】は、非核3原則見直しについて国民の理解を得るということで、日本へのアメリカの核兵器持ち込み・配備を国民に迫るということです。高市早苗首相は、非核3原則を敵視しているので、今後の平和運動との極めて大きなせめぎ合いになると思います。

 提言の問題点の一つは、「核共有」は日本に核弾頭を貯蔵することを前提としており、日本の非核三原則に反することは言うまでもありません。加えて、核不拡散条約(NPT)にも違反するということです。NPTの第1条は「締約国である各核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置又はその管理をいかなる者に対しても直接又は間接に移譲しない」、第2条は「締約国である各非核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置又はその管理をいかなる者からも直接又は間接に受領しない」と謳っています。日本にアメリカの核兵器を貯蔵して、アメリカから核攻撃能力を持つF35Aを購入して、いざとなったら核ミサイルを使うというのは、この条文に明らかに違反します。
 二つ目は、アメリカは国際法違反の先制攻撃戦略を採用しており、核兵器の先制使用も排除していません。オバマ政権が核兵器の先制不使用への転換を検討したときに、日本政府が反対したことによって撤回した経緯があります。先制攻撃は国際法上違法であり、日本の憲法においてもアメリカとの核共有はあり得ないと思います。
 三つ目は、「核共有」の枠組みをつくって、核攻撃のプロセスに日本が加わったとしても、最終決定権はアメリカにあり、実態は今と変わらないということです。むしろ、米国が日本に提供している「拡大抑止」だけでは不十分であり、日本政府はアメリカの「核の傘」を信頼していないということを国際社会にさらけ出すことになります。
 四つ目は、そもそもアメリカが日本に核兵器の運搬手段を提供することがあるのかということです。日米同盟がここまで深化したとしても、本当にアメリカが日本を信用しているのかは極めて不確実で、個人的にはそこまでアメリカは日本を信用していないと思います。
 五つ目は、日本への核持ち込みを決めるのはアメリカであり、日本が認めるか否かは関係ないのです。そもそも「有事」「平時」を問わず、核兵器を搭載した米艦船・航空機の寄港・通過を事前協議の対象外とする核密約(1960年1月の討論記録)は破棄されておらず、法的には現在も有効です。持ち込むだけでなくて、1969年の沖縄返還ときの核密約で貯蔵する権利もあります。こうした密約はただちに廃棄すべきです。

 提言では核武装は否定しています。極めてコストが高いということで核武装は否定して、あくまでアメリカの核を中心とした核抑止戦略が重要だとしています。
 もう一つ、日米拡大抑止の強化との関係で、米国は2022年10月に公表した新たな「核態勢見直し」(NPR)で、核戦力の「可視化」を打ち出しています。核兵器搭載可能なB52戦略爆撃を中国周辺で頻繁に飛ばして、日本や韓国、フィリピンとの共同訓練を繰り返しています。
 中国に対して我々はいつでも核攻撃できるぞと見せつける戦略ですが、そういう関係で「非核神戸方式」を守るたたかいがいま極めて重要になっています。神戸市では1975年以来、外国艦船に非核証明を求めており、核兵器の搭載の有無を答えないNCND政策のもとでアメリカ艦船は50年間入港できなかったのです。ところが外務省が「核は搭載していない」と保証したことを港湾管理者である神戸市が受け入れ、今年3月24日に1975年以降初めて米軍の掃海艦ウォーリアが入港しました。これは「非核神戸方式」を骨抜きにすることによって、今後核兵器を搭載した米艦船が日本に入港する地ならしにする流れではないかと思います。