2023年第78回国連総会第1委員会の議論状況

 土田 弥生原水爆禁止日本協議会事務局次長 

新アジェンダ連合の発言

 新アジェンダ連合は、冒頭からNPT(核不拡散条約)の義務と約束を履行せよと迫っています。TPNWについては、普遍化の促進と「ウィーン行動計画」の実施でTPNWの体制を強化すべきとし、TPNWは核軍備撤廃の有効な措置でありNPTを補完するものと述べています。NPTは重要な要であると言い、核保有国は6条の義務を履行せよ、核兵器を永続的に保有することはNPTの目標・目的に反する。核兵器の使用威嚇は、国連憲章、国連総会決議にも反するということを強調しています。

 オーストリアはクメント大使が発言し、核抑止論という根拠のない信念から脱却することを強調しています。核抑止力は多くの仮定に依存しており、不確実性をはらんでいる。核抑止が失敗する可能性があることは確かだ。核抑止力が失敗した場合、これまで理解されていたよりもはるかに深刻かつグローバルな形で、壊滅的に失敗する可能性が高い。我々の共通の安全保障と人類全体の生存を、証明不可能な仮定の上におくには、危険があまりにも大きすぎると言っています。核軍縮不拡散体制を強化するために、すべての国が取るべき具体的かつ重要な一歩がTPNWへの支持だということで発言を締めています。

非同盟の発言

 非同盟はインドネシアが発言しました。核兵器の存在や核保有国の廃絶の進展のなさによる脅威に懸念を表明し、イギリスの核弾頭上限の引き上げなどの核政策見直し、新START(新戦略兵器削減条約)やINF(中距離核戦力全廃条約)など保有国の戦略的対話のなさなどを指摘しています。核保有国に核廃絶の義務を果たせと呼びかけ、核軍縮に条件がつけられるべきではない、リスクの低減は廃絶に代わるものではないと強調しています。禁止条約については、条約の発効に注目をし、核廃絶にさらに貢献することに期待を表明しています。NPTは引き続き核軍縮不拡散体制の中で重要な条約であり、核軍備撤廃、不拡散、原子力の平和利用の三本柱のバランスのとれた発展を求めています。

アメリカの発言

 アメリカは、国連第1委員会や軍縮会議(CD)などの多国間機関が果たすべき役割と、世界の軍備管理と核不拡散体制の健全性と安定性が今まさに、危機に瀕していると述べています。脅威に対処するための手段と制度を強化するべきということで、言葉と行動が一致するべきとして、ロシアと中国、イラン、北朝鮮を批判しています。関与と前進を求める人たちか、先送りを好む人たちかの選択が迫られているとし、より強力なNPT、機能するCD、そして我々の仕事を台なしにする運命論を拒否する側を選んでほしいと述べています。

日本の発言

 日本は、NPTは不拡散・軍縮の要、核兵器のない世界への目標は共通のものと述べながら、ロシアの侵略が続き、中国は軍拡を推進しており深刻な安全保障環境にあるとして、核廃絶は迫らず、日本の路線はG7で発表した「広島アクションプラン」だと言っています。 日本は今回、「核兵器のない世界に向けた共通のロードマップを構築するためのステップ」という決議案を提出し、現在の国際情勢のもとで核兵器のない世界に向けた基本的な道筋を示していると言っています。北朝鮮の核ミサイル活動の激化を深刻に懸念し、日本は北朝鮮に対し、関連するすべての国連安全保障理事会決議を遵守し、早期にNPTおよびIAEA保障措置の完全遵守に復帰することを強く求めると述べています。

決議の採択状況

 決議の採択状況は、新アジェンダ連合が出している「核兵器のない世界へ 核軍備撤廃の約束履行の促進」は賛成133、反対26、棄権25。非同盟の「核軍備撤廃に関する2013年国連総会ハイレベル会合の後追い」が賛成139、反対34、棄権9。オーストリアが出している「核兵器の人道的帰結」が賛成141、反対11、棄権13。「核兵器禁止条約」が賛成123、反対43、棄権17、反対43で、反対は核保有国とNATO加盟国、日本と韓国です。

日本決議に厳しい批判

 日本の決議「核兵器のない世界に向けた共通のロードマップを構築するためのステップ」に対しては、総会では賛成148、反対7、棄権29という状況です。特徴は、新アジェンダや非同盟をはじめ、オーストリア、メキシコ、アイルランドなどの多くの非核国が核廃絶を主張し、核保有国に迫っている中で、日本の決議にはそれがないということです。日本決議に反対の7つの国は、中国、北朝鮮、イラン、ニカラグア、シリア、ロシア、南アフリカです。新アジェンダ、非同盟のリーダー国の南アフリカがはっきりと反対に回ったのは、日本政府の態度がどれだけひどいかを示すものです。オーストリア、アイルランド、ブラジル、インドネシア、マレーシア、アルジェリア、エジプト、ニュージーランドなども棄権しています。
 賛成票を投じた国の中にも投票声明で厳しい批判や注文をつけています。スイスは、安全保障環境の悪化などの条件がなければ履行しなくても良いかのような言い方をしていると指摘しています。メキシコは、核軍備撤廃に関し具体的な行動を欠き、過度にリスク軽減手段を重視し、核兵器国が持つ軍備撤廃措置の義務や約束の履行を引き続き条件つきのものとしていると批判しています。 南アフリカは、核兵器の保有、維持、近代化のリスクを小さく見せることで、核兵器の保持をより理解しやすくしようとしていると痛烈に批判しています。