第11回NPT・第1回準備委員会の特徴

土田弥生日本原水協事務局次長

全体の議論の特徴

 私たちは、2026年NPT再検討会議に向けた新たなプロセスが始まる準備委員会ということで重視して取り組みました。けれども、全体的にはNGOなどの参加は低かったです。クメント大使に「今回の議論はどうですか」と聞いたら、「とても悪い、エネルギーもない」と言っていました。
 議論を聞いて、考え方の違いは超えて、今直面している危機を何とかしようという態度が求められているにもかかわらず、特に核保有国と核の傘の国の側に、核戦争によって、世界の人々が死ぬとか被害を受けるということに何の関心も持っていないということを実感した会議でした。
 また、現在の世界の分断が議論に色濃く反映されていました。

核保有国の発言

 アメリカやイギリス、フランスは、NPTの維持と強化、NPTだけが核兵器廃絶を実現する道だと強調しつつ、世界の安全をロシア、中国や北朝鮮、イランが脅かしているから、今は核兵器をなくすのは良くないという発言をしていました。が多く、今、NPTを弱体化しているのは、また世界を危険にしているのはロシア・中国・北朝鮮・イランだという構図でした。
 アメリカは、ロシアとも中国とも軍備管理交渉はしたいと思っているが相手が応じない。アメリカとしては多国間の専門家会議を行う、リスクの削減、透明性、FMCT(核分裂物質生産禁止条約)などが6条推進の基礎となる、NPTの強化に繋がると言っています。しかし結局、第6条の義務の履行とか、2000年、2010年の合意の実行には一切触れていません。

日本の発言

 日本の武井副大臣は、NPTの維持と強化というのは核保有国も含めた全体の一致点だからこれが大事だ。広島ビジョンは核兵器のない世界への強固なプラットフォームである。そのために、透明性と不拡散のためのFMCTが重要だと発言。後半は、福島原発事故のアルプス処理水(汚染水)が安全であるという国際的な認知を取りたいという感じでした。
 クラスターで小笠原軍縮大使が、NPTの維持と強化に強い意思を準備委員会では示すべきと発言。具体的には、アメリカと同じようにリスクの削減、透明性、核兵器の削減を継続することと、FMCTの交渉の即時開始、CTBT、そして被爆地訪問であって、6条の義務、2000年、2010年の合意を実行せよということには一言も触れませんでした。
 大使との面会では、広島ビジョンについて「G7のリーダーとして実際的で現実的なメッセージを発信できた」、サミットでは「G7以外の10カ国に核兵器使用がもたらす実相について見てもらった」と成果を強調しましたが、私たちは「被爆国が核抑止力に固執するなど容認できない」と強く批判しました。核兵器禁止条約について気が付いたことは、「核保有国を関与させることを重視している」「日本自身が禁止条約に反対しているわけではない」と述べ、反対の立場の弁護に回っていたことです。世論に押されていると感じました。第2回締約国会議へのオブザーバー参加については、まだ決めていないと言っていました。

核兵器禁止条約を力に、揺るぎない核廃絶の流れ

 今回、核兵器廃絶を求めている非核国の国々は本当に頑張っていました。いろいろ困難はあっても揺るぎない核廃絶の多数派の流れがあることに確信を持つ必要があります。
 新アジェンダ連合を代表したメキシコは、現在の危機からみて緊急に意味ある行動が求められていると強調しました。しかし現実には、核軍縮の約束が実行されていないことを指摘し、核軍縮も含め、集団的に条約強化の努力を呼びかけました。焦点は、核軍縮の義務と約束の全面履行だと述べ、新たなサイクルのスタートとして、明確な目的と方向性を持つべきだと強調しました。核兵器国らの発言について、国際の安全保障環境が悪いといって自分たちの不履行の理由にするのは容認できない、明確な約束も含め、これらの約束を再確認するべきだ、と批判しました。核兵器の人道的影響の認識を広げること、核兵器禁止条約はNPTを補完し、6条が緊急に履行されるべきことの重要性を指摘し、これへの支持や協力、賛同、参加を求めています。
 オーストリアのクメント大使は、ロシアのウクライナ侵攻と核の使用の威嚇は、全人類の安全を損なう、NPTだけでなく多国間軍縮不拡散体制全体にも影響する、今回の準備委員会はいつもの準備委員会であってはならないと述べました。国際社会全体が核の脅威を拒否し、核兵器使用のタブーを強調し、核軍縮・不拡散体制の強化をはかるべきだと強調しました。核兵器使用・威嚇は、国連憲章違反で断固拒否。核抑止力は実際に核を使うためのもの。非核国の多くは核兵器禁止条約に参加して第6条の義務を履行していると言っています。禁止条約への参加は、核軍縮・不拡散体制ばかりでなく、ひいては、多国間主義、国際法、国際の平和と安全を支持し関与する意思を示すものである、と強調しています。
 非同盟のインドネシアは、核軍縮は非同盟運動の最優先課題、NPTの目的は、非核国の核兵器取得の防止だけではなく、核兵器国の軍縮もある、条約の延長は、核兵器保有の永続を認めるものではないと原則的立場を表明しました。核兵器の使用威嚇は人類に対する犯罪、核兵器廃絶が核兵器の使用威嚇を防ぐ唯一の保証、核保有国が非核国に対して核攻撃をしない消極的安全保証の条約を締結するべきだと強調しました。CTBTの発効、核実験、研究、開発の禁止、そして、核保有国による核軍縮の義務、2000年、2010年の合意の実行を呼びかけ、禁止条約についても触れています。
 核兵器禁止条約の締約国は声明を出し、今回の準備委員会を核兵器を全面的に禁止する国際法ができて初めての新たなNPTサイクルと位置づけ、核兵器の全面禁止は拡散防止に最も有効な法的措置であること、核兵器禁止の法的拘束力を持つ体制の確立が必要であると強調しました。核兵器の使用を防ぐ唯一の保証は、核廃絶であり、そのために第6条と約束の履行を求めています。そして核兵器禁止条約への協力、第2回締約国会議への参加を呼びかけています。

インパクトを与えた原水協の発言

 8月2日のNGOセッションで私は発言し、第一に、国連憲章、国連第一回総会第一号決議、6条をはじめとするNPTの各条項、2000年、2010年の合意など、このNPT準備委員会が、我々が守るべき法や原則、すでに受け入れた合意が何なのかをしっかりと確認し、その履行が現在の再検討プロセスの目標であることを宣言するよう強く求めました。
 第2点は、核兵器というのは戦争も、侵略も、人々の安全を守ることも、核の威嚇を防ぐこともできていないと強調。核抑止力が効果があるとか、ないとかの問題ではなく、日本国民としては、あの広島と長崎の破壊と殺戮をもって威嚇し、再現することが、自国の安全を理由にすれば果たして法的にも倫理的にも許されるのか。核抑止力の本質は国連憲章の禁ずる最悪の武力行使である。核兵器禁止条約は、2010年に全ての締約国が合意した核兵器のない世界の平和と安全を確立する枠組みの具体的形態である。だから2026年の会議では核兵器禁止条約への支持と参加を含め、とりわけ核兵器国や核依存国の政府が第6条の義務とそれを具体化した全ての合意を実行するよう主張しました。
 最後に、核抑止力を擁護したG7の宣言は、今の日本国民と被爆者にとってこれは絶対に受け入れられないと日本政府を批判し、今回の再検討プロセスが、実際に核兵器のない世界に途を開くプロセスとなるよう、国際的にも、とりわけ核兵器国やその依存国の市民社会の中でも核兵器廃絶の合意を築くことを呼びかけました。

世論や運動の役割が決定的に重要

 結論から言うと、各国の世論や運動の役割が決定的に重要だと感じました。第2回締約国会議に向けて、各国で自国政府に禁止条約に参加を迫っていかなければならないと思っています。私たちは、第2回締約国会議のニューヨークで国際共同行動を取りくもうとしています。「日本を変えてニューヨークへ」と打ち出し、「日本政府に禁止条約の参加を求める署名」をさらに広げようと秋の運動に取り組んでいます。特に、この運動に青年を組織し、そして彼らをニューヨークに送ろうと考えています。日本が今やっている危険な核抑止力一辺倒のこの態度を変えることが、第2回締約国会議にむけた日本の運動の一番の貢献になると思います。