核保有国は核兵器撤廃の約束まもれ 2025.7.15
岡田 則男さん ジャーナリスト・常任世話人
第二次世界大戦末期に世界で初めて核兵器が広島・長崎に対する攻撃で使われてから80年を経た今日、あらたな核軍拡競争が進行しています。核戦争の脅威は去るどころかあらたに高まっていると、多くの専門家が警鐘を鳴らしています。核軍拡について信頼性の高いデータ検証・分析を行っているSIPRI(ストックホルム国際平和研究所)が6月16日に発表したことしの年次報告書は、あらたな軍拡競争」が核保有9ヵ国(アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエル)の間で始まろうとしている実態を明らかにし、世界はいっそう不安定になっており人類の願いに反して、核兵器がいつか使われる可能性は高まっていると指摘しています。
同報告書は核兵器の現状について、2025年1月現在▽世界全体で推計約1万2400発の核弾頭が備蓄されていた▽そのうち9600発余は使用可能な状態で軍事用貯蔵されていた▽うち約3900発はミサイルおよび航空機に配備され、その他は中央貯蔵庫に備蓄されていた▽配備されている弾頭のうちおよそ2100発は、弾道ミサイルに搭載されて「高度作戦警戒態勢」におかれていると指摘。これらの弾頭のほとんどすべてが、ロシアあるいは米国のものであったが、中国も平時、ミサイルに若干の弾頭を搭載しているかもしれない▽ロシアと米国は、すべての核兵器の約9割を保有していて、核保有の上限を決める新しい協定に合意できなければ両国が戦略ミサイルに配備する弾頭の数は新START(戦略攻撃兵器の削減・制限に関する2010年の米ロ条約)が26年2月に失効すれば増大する可能性があると分析しています。
また、「冷戦終結以来ロシアと米国で、廃棄した弾頭の段階的解体数が、新しい弾頭の配備よりも多くなり、核兵器の世界全体の備蓄は年々減少したが、解体のペースが低下し、今後何年かのうちに逆転し、新しい核兵器の配備が速度を上げていく可能性が高い」とのべています。
SIPRIの大量破壊兵器プログラムの準上級研究員で、アメリカ科学者連盟(FAS)は核情報プロジェクトの責任者でもあるハンス・クリステンセン氏は、「世界の核兵器削減の時代が、冷戦終結以来続いたが、それも終わり、核兵器増大、激しい核のレトリック、軍備管理協定の放棄への明確な流れになっている」と語っています。
他方、核兵器禁止条約が2017年に国連で採択され、50ヵ国と地域の批准をもって21年1月22日に発効し、批准国は昨年4ヵ国が新たに加わり73ヵ国となりました。このほかまだ批准していない署名国が25ヵ国あります。SIPRIの所長をつとめるダン・スミス氏は「核戦争で勝者はない」との議論の高まりの反映だとのべ、「核時代に入って80年になるが、核戦争を起こすというのは、どんな状況であっても絶対的に何の意味もなさない」と述べるとともに、現在の中東情勢にふれて、とくに「イスラエルは、存亡にかかわる深刻な脅威があったなら必ず核兵器を使うと思う」と指摘しています。
◆石破政権の核政策批判と世論と運動の強化を
こうした状況の中で日本の石破政権は、核兵器禁止条約に背を向けるばかりか、米国に追従して「核抑止」論や「拡大核抑止」論を唱え、核戦争のリスクをいっそう高めています。被爆国日本で、核兵器を明確に否定する「非核の政府」を求める世論と運動の発展が今日ほど求められているときはありません。こうしたなかで、好核のレトリックを打破する世論と運動を市民社会の間で広げ、国際的な共同を強めることがますます重要になっています。

推定弾頭数はすべて概算。「SIPRI Yearbook2025」より
