米軍指揮下の戦闘司令部発足  敵基地攻撃も一体に   2025.5.15

竹下 岳さん 「しんぶん赤旗」政治部記者

 自衛隊は1954年の創設以来、事実上、米軍の指揮下におかれてきた。形式上は独立した軍隊だが、旧日本軍の解体後、米軍によって一から育成され、日米同盟強化の中で一体化・従属化を強めてきた。その〝完成形〟とも言える動きが進行しつつある。日米の「指揮統制の枠組み向上」=在日米軍・自衛隊双方の司令部機能を強化し、両者を「統合」しようというもの。自衛隊を頭(司令部)から呑み込み、名実ともに、米軍の指揮下に組み込むことは明白だ。憲法と自衛隊との矛盾は極限まで強めることになり、その動向から目を離してはならない。

 3月24日、陸海空自衛隊の実動部隊を平時から戦時まで一元的に指揮する「統合作戦司令部」が、市ヶ谷駐屯地(東京都新宿区)で発足した。当面は240人態勢となる。防衛省は、同司令部が「敵基地攻撃能力」を一元的に指揮することを明らかにしている。敵基地攻撃は日本が武力攻撃を受けていない段階から、長射程ミサイルなどで他国領域を攻撃するものであり、憲法違反にとどまらず、国際法違反の先制攻撃にもつながりかねない。
 防衛庁(現・防衛省)は2006年、統合幕僚監部を創設し、戦後初めて、陸海空自衛隊が一体になる「統合運用」に道を開いた。ただ、平時における実動部隊の指揮権は、依然として陸海空各自衛隊にあった。このため、当時から実動部隊を束ねる司令部の創設も浮上していたが、1人の指揮官が強大な権限を持つ危険があるとの議論もあり、立ち消えになった。
 一方、米軍は1人の指揮官(統合司令官)が全軍を指揮する態勢を基本としており、日米の一体化が深化する中で、米軍と歩調を合わせるために統合司令部構想が再浮上した。統合作戦司令部(常設統合司令部)の創設は、2022年12月に閣議決定された「安保3文書」で初めて明記されたが、防衛省は創設の必要性の一つとして、「米インド太平洋軍司令部と調整する機能」をあげている。インド太平洋軍は在日米軍を含む、アジアから西太平洋にいたる米軍の実動部隊を一元的に指揮する統合司令部だ。日米の軍事一体化が加速する中、自衛隊も同様の司令部を持った方がいい―。そう提案したのは、ハリス米太平洋軍司令官(当時)だったと、河野克俊元統合幕僚長は明らかにしている。
 さらに、2024年4月のバイデン米大統領・岸田文雄首相(いずれも当時)による首脳共同声明で日米の「シームレスな(切れ目のない)統合」に向けた「指揮統制の枠組み向上」を明記した。その具体化として、昨年7月28日の日米安保協議委員会(2プラス2)共同文書は、統合作戦司令部のカウンターパートとして、在日米軍司令部を「統合軍司令部」へと再編成する方針を示した。当時のオースティン国防長官は、「日米同盟創設以来、最大の変更」だと表明した。
 「シームレスな統合」とは何か。インド太平洋軍の文書「IAMD構想2028」は、先制攻撃を含む敵基地攻撃と「ミサイル防衛」を一体化させた「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)に日本も組み込む考えを示した上で、「すべてのプレーヤー・コーチが、同じプレーブックを持ち、一緒に訓練し、一緒に作戦を実行し、敵からは米軍と同盟国が一つのチームとして見られる」=単なる「調整」ではない、完全に一つの軍になることが「シームレス」だと解説している。
 敵基地攻撃能力の運用も、自衛隊単独で行われることはありえない。攻撃目標は米軍の情報に依存せざるをえず、事実上、情報でも装備でも圧倒的に優位な米軍の指揮下に置かれることになる。

 今年、発足したトランプ政権の動向が注目されたが、亀裂が生じている北大西洋条約機構(NATO)とは対照的に、日米同盟強化の方針は前政権からそのまま踏襲した。今年3月30日に行われた日米防衛相会談での共同記者会見で、ヘグセス国防長官は、在日米軍司令部の統合軍司令部への移行の「第1段階を開始した」と表明した。その一環として、米軍は自衛隊の統合作戦司令部との連携を専門に扱う部門を、東京都心部の港区六本木にある米陸軍基地「赤坂プレスセンター」に設置した。市ヶ谷駐屯地に近く、防衛省・自衛隊と日常的に連絡・調整を行うとしている。将来的に、統合軍司令部そのものの拠点となる危険もある。
 「統合軍司令部」とは何か。日本には原子力空母や最新鋭の戦闘機、海兵遠征軍といった強大な戦闘部隊が置かれているが、在日米軍司令部はこれら部隊の指揮権を有しておらず、その権限は基地の管理など行政的なものに限られている。部隊の運用や共同訓練・共同作戦の立案といった権限はすべて、インド太平洋軍が有している。こうした権限の一部を在日米軍司令部に移管し、「戦闘司令部」(ヘグセス長官)に変革することが検討されている。これにより、自衛隊の実動部隊を指揮下に置く統合作戦司令部との「統合」をより効果的に進め、事実上の「日米統合司令部」をつくる狙いだ。
 それは、どのような形になるのか。米国防次官に就任したエルブリッジ・コルビー氏は3月4日、米上院軍事委員会公聴会で、日米の指揮統制のあり方をめぐり、「韓国軍との関係に見られるような統合のモデルに向けて、さらに深化する必要がある」と発言した。
 米韓同盟における戦時の指揮権(戦時作戦統制権)は現在、米韓連合軍司令部(CFC)が有している。CFCは発足以来、司令官は米陸軍大将が歴任している。つまり、韓国軍は戦時において、米軍指揮官の下に置かれることになる。
 単一指揮権をめぐっては、米側は、日米安保条約の締結に伴う行政協定草案(日米地位協定の前身=1951年12月)に、「有事に統合司令部を設置し、指揮権は米側が行使する」と提案したことがある。日本側は憲法上不可能だとして抵抗し、条文化は見送られるが、米軍が有事に指揮権を持つことが口頭で確認された。いわゆる「指揮権密約」だ。コルビー氏の考えは、これを公然化・制度化しようというものだ。  自衛隊は世界で最も米軍に従属した軍隊であるが、戦力不保持を明記した憲法9条との矛盾を抱えていることから、公然とは米軍の指揮下に入ることはできず、海外派兵においても、武器使用基準や活動区域が制限されてきた。国際法違反の先制攻撃も選択肢にあげ、侵略戦争を何度も遂行してきた米軍の指揮下に入れば、憲法との矛盾は極限に達する。

 3月30日の記者会見で、ヘグセス国防長官は「台湾海峡」に言及した上で、「日本は西太平洋のいかなる紛争においても最前線に立ち、日米は相互に支援する」と明言した。九州沖から沖縄、フィリピンにいたる「第1列島線」へのアクセス強化にも言及した。「台湾有事」をはじめとした中国との軍事衝突で自衛隊を最前線に立たせ、米軍とともに、あるいは米軍に代わってたたかう。そのために司令部機能を統合し、指揮下に置く=米側の狙いは明瞭だ。その結果、沖縄は再び「捨て石」にされる。戦前は天皇制国家の存続のため、今度は「米国防衛」のために。沖縄だけではない。日本全土が戦場となる危険がある。
 ヘグセス長官は、「平和を望む者は戦争の準備をしなければならない」と述べ、中国に対抗するための軍事力強化を正当化した。しかし、その先にあるのは果てしない「軍事対軍事」のエスカレーションであり、国民生活を犠牲にする大軍拡だ。私たちはむしろ、こう言わなければならない。「平和を望む者は平和の準備をしなければならない」