「核抑止力」から脱却し、被爆国としての役割果たせ

第78回国連総会に向けて日本政府に要請(23.9.12)


政府に要請を行う非核の政府を求める会の代表ら
=9月12日、外務省

 非核の政府を求める会は9月12日、外務省を訪れ、第78回国連総会にむけて、日本政府が核兵器廃絶のために被爆国にふさわしい役割を果たすよう申し入れました。
 要請の内容は、日本政府が、▽核兵器禁止条約に署名・批准し、第2回締約国会議にオブザーバー参加し、開始された被害者支援への国際協力に参加する▽「核抑止力」依存政策から脱却し、一日も早い核兵器廃絶を訴える決議案を提案する。一連の核兵器廃絶決議案に賛成票を投じる▽非核三原則を堅持し、「核密約」を破棄する——の3項目。
 要請には、斎藤俊一(同会前事務室長)、野口邦和(元日本大学准教授)の両常任世話人と川村好伸事務室長が参加。笠井亮日本共産党衆院議員(同会常任世話人)が同席しました。
 外務省からは吉川ゆうみ外務大臣政務官らが対応。「核兵器禁止条約は〝核なき世界〟への出口として重要な条約と認識している」「出口に向けて道筋をつけるために努力する」と言いつつ、「核禁条約に核兵器国は1ヵ国も参加していないので日本は参加できない」「日本の安全保障上、米国の拡大抑止は不可欠だ」など米国に追随する従来の見解を繰り返しました。
 会の代表は、「日本政府は被爆国として、少なくとも11月の締約国会議に参加すべきだ」「核なき世界の出口にむけ、核兵器廃絶諸決議案に賛成し、各国と共同することが必要」などと重ねて強く申し入れました。


第78回国連総会に向けての日本政府への申し入れ(全文)

 第78回国連総会が、まもなくニューヨークの国連本部で開かれます。ロシアのプーチン政権がウクライナ侵略を続け、「核兵器使用」の危険性がかつてなく高まるもとで、国連憲章にもとづく早期の平和解決へ国連の真価が問われる総会となります。また、今総会は、先の核不拡散条約(NPT)第11回再検討会議・第1回準備委員会の議論を受け、11月27日〜12月1日の核兵器禁止条約(TPNW)第2回締約国会議を前に開かれることから、核兵器禁止・廃絶の流れをいかに加速させるかに世界の耳目が集まっています。
 当会は、ロシアによる侵略行為と「核の威嚇」を断固糾弾し、その中止を強く求めるとともに、今年の総会が、早期の戦争終結と軍事的緊張をあおる「核抑止力」論打破のために規範性のあるメッセージを発信する機会となるよう、日本政府が積極的な役割を果たすことを強く求めます。
 7月31日から開かれたNPTの第1回準備委員会で国連の中満泉事務次長・軍縮担当上級代表は「冷戦以降、核兵器使用の危険がこれほど高まっているときはない」と懸念を表明しました。ロシアによる「核の脅し」が許されないのは当然ですが、G7広島サミットが「核抑止力」論を公然と主張し、7月に開かれたNATO首脳会議が安全保障にとって「核兵器が唯一無二の存在」だと核兵器にしがみつく驚くべき態度を表明したことも重大です。核兵器の使用は、地獄の惨状をもたらし、人類滅亡への道であり、どんな口実をつけようとも絶対に許されません。核兵器による「安全保障」を正当化することは断じて認められません。
 被爆78年を迎えた8月6日と9日、広島と長崎の両市長は「核抑止力」からの脱却と、日本政府にTPNWへの参加を呼びかけました。TPNW発効から2年半余、批准は68ヵ国、署名は92ヵ国へと広がり、昨年の国連総会では、TPNW締約国会議開催を歓迎する決議に国連加盟国の約6割にあたる119ヵ国が賛成しました。しかし、岸田政権は、被爆国の政府でありながら同国連決議にも5年連続で反対し、核兵器禁止・廃絶に向けた国内外の大きな流れを妨害する役割を果たしています。
 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は2022年の世界の軍事費総額が過去最高の313兆5000億円超になったことを明らかにしましたが、岸田政権は憲法違反の敵基地攻撃能力保有など軍事力による抑止力強化のために5年間で43兆円もの軍事費を投入するとしています。
 いま岸田政権がなすべきことは、戦争の準備ではなく、平和のための外交に力を尽くすことです。そのために、TPNWに参加することを表明し、核兵器禁止・廃絶の機運を高める先頭に立つべきです。核保有国に対し、核軍備の縮小・撤廃の交渉義務を定めたNPT第6条や、過去の会議で合意した核軍縮の約束の履行を求めるべきです。
 当会は、第78回国連総会において貴職が、唯一の戦争被爆国であり、憲法9条を持つ日本の政府にふさわしい役割を果たされるよう、以下のとおり要請します。

○核兵器禁止条約に署名・批准すること。少なくとも、第2回締約国会議にオブザーバー参加し、開始された被害者支援への国際協力に参加すること。
○核兵器使用を前提とする「核抑止力」依存政策からの脱却を国際社会に宣言すること。一日も早い核兵器廃絶を訴える決議案を提案するとともに、核兵器廃絶を求める一連の諸決議に賛成票を投じること。
○非核三原則を厳守し、日米「核密約」を破棄すること。
           
2023年9月12日

内閣総理大臣 岸田文雄殿
外務大臣 林 芳正殿